国土交通によると、2015年の訪日外国人客数は12月19日時点で1900万人を突破したという。政府は「東京オリンピックの2020年までに2000万人」という目標を掲げていた。12月が11月並みの前年比40%増なら年間計は1970万人となるから、目標は5年前倒しでほぼ確実に達成されそうだ。

日本を訪れる外国人の数(訪日外国人客数)は、リーマン・ショックや東日本大震災の影響を受けて一時的に大きく落ち込んだものの、2012年以降は観光客を中心に増勢が加速。2014年には1341万人に達した。最新データである2015年11月の来客数を国別にみると、中国、韓国、台湾、香港の東アジア4か国だけで約7割のシェアを占めるが、中国は前年比75%増の約36万人と圧倒的な存在感を強めている。

「爆買い」は日本経済への神風?

訪日外国人の旅行中の消費である「インバウンド消費」。同消費の規模は2011年から3年連続で増え、2014年には2兆円を突破した。2兆円はGDP(国内総生産)比で0.4%にすぎないが、インパクトは決して軽視できない。

2015年も訪日観光客の消費の勢いはとどまることを知らなかった。観光庁が発表した2015年7~9月の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人全体の旅行消費額は前年比82%増と7期連続で過去最高値を更新し、1四半期で1兆円を初めて超えた。

このインバウンド消費の激増を象徴しているのが中国人の「爆買い」だ。訪日中国人観光客数も2010年以降毎年100万人を超え、2015年も11月までの累計で前年比110%増の460万人となり、韓国、台湾を抜いて国別の首位に躍り出た。

中国人客の特徴はなんといっても旺盛な消費意欲だ。2014年計のデータ(観光庁)で国籍別の旅行消費額を見ると、中国人は5583億円で首位。前年からほぼ倍増、全体の3割を占めるまでに膨らんだ。1人あたりの旅行消費額も23.2万円で全体平均の15.1万円を大きく上回っているが、2015年7-9月期ではこれが前年同期比約19%増の28.1万円にまで達している。

象印社長「ピークは終わった」

上海株式市場の混乱、中国GDP成長率の鈍化見通しを含め、ただならぬ雲行きの中で始まった2016年の世界経済。それを見るまでもなく、インバウンド消費に訪れそうな変調をいち早くかぎつけているような見方も出てきている。

その一つが、象印マホービンの市川典男社長の「中国人による爆買いのピークは過ぎた」との発言だ。外国人観光客ら向けの炊飯器の売り上げは2015年秋から前年割れ、11月は推計で1年前の3割減に落ち込んだという。

経営コンサルタントとして知られる火浦俊彦氏も「この先、日本のブランド商品が自国でも手に入るようになれば、わざわざ日本へ買い物に来る必要はなくなる」と「爆買い」の継続性に懐疑的だ。

今年の「爆買い」効果のほどは?

2016年の爆買いはどうなるのか。経済効果を正確に予測することはできていないが、大まかな見通しは立っている様子だ。

第1に、中国からの観光客数は引き続き増加する。連休のある2月(春節)、5月(労働節)、10月(国慶節)もさることながら、最近1~2年は7月、8月と夏休みの家族連れが急増しているという。長期的な傾向としても、2000年から毎年10~12%の割合で旅行市場は膨らんでいる。万が一「中国バブル」が崩壊したとしても、中国人がいったん覚えた旅の楽しみを捨てはしないだろうとみられている。

第2に、家電や化粧品など特定人気商品の「爆買い」はいつまでも続かない。旅行形態は個人旅行に、旅行目的は体験型にウェイトをシフトしてゆくことになろう。もっとも、中身は変わっても、インバウンドの一人当たり消費額が減るとは限らない。

第3に、政府の外国人観光客数の目標はおおむね、達成されるとみていいだろう。12月に外国人観光客目標を大幅に引き上げ、2020年3000万人、インバウンド消費額についても4兆円に倍増とするとの意向を政府はすでに表明。2015年計の訪日客数1970万人が今後、年間10%ずつ伸びること、観光客一人当たりの消費支出額が、2014年水準の15万円強で横這いであれば十分達成される見通しだ。

特に昨年、大きく注目された中国人を中心とした外国人観光客の「爆買い」だが、中国の休暇シーズンを前に、今年の動向にも注目が集まりそうだ。(ZUU online 編集部)

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