世界MBAランキング「Eduniversal Best Masters Ranking 2015-2016」が発表された。日本国内にも京都大学や一橋など高偏差値の大学がMBAのコースを持っているが、フランスに拠点を持つSMBG社が実施した調査によるこのランキングでは、日本の1位は名古屋商科大学ビジネススクールだった。

「社会人MBA」「企業家養成」などを含む5つのカテゴリーで国内1位となった名古屋商科大学ビジネススクールとはどのような機関なのだろうか。

意外なことに名古屋商科大学は、大手予備校河合塾によれば偏差値35。

エリートが取得するイメージを持ちがちなMBAとは程遠い存在に感じるかもしれない。そのビジネススクールが名門大学を抑えMBAランキングで国内1位を取ったとは驚きだ。その魅力を今回は探ってみよう。

MBAとは何か 経営学研究科の違い

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

エリートビジネスマンが取得するイメージのMBA。普通の大学院と何が違うのだろうか。MBAは日本語では経営学修士、英語では「Master of Business Administration」と言われ英字の頭文字を取り「MBA」と呼ばれる。多くの場合はビジネススクールと呼ばれる専門職大学院にて授与される学位だ。

大半の大学では経営学を学術的に研究する経営学研究科とは別のコースとして設置されており、経営学研究科では経営を研究し、ビジネススクールは勤務経験があるビジネスマンに対して科学的経営アプローチを教える機関として設置されている。

このMBA・ビジネススクールは19世紀末にアメリカのペンシルベニア大学ウォートンスクールから始まり、ハーバード大学ビジネススクールがケースメソッドを行うコースの仕組みを作り上げ、多くの大学においてMBAコースが作られた。

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日本で2校しか認められていない教育機関

MBAが注目されビジネススクールが増殖することで、教育機関としての品質に疑問符がつく大学が出てきた。これに対抗すべく、MBAの品質を担保するためにハーバード大学やウォートン大学等の教育機関が集まり、構築したのが「AACSB(Association to Advance Collegiate Schools of Business)International」である。

これはMBA教育を認証する認証機関だ。AASCB認証は、本場であるアメリカの一流ビジネススクール達がお互いに審査し合い、MBAを名乗ることを認められた大学の証だ。

この認証を持つ大学は日本には名古屋商科大学と慶應義塾大学のみとなっている。名古屋商科大学のMBAは世界のビジネススクールに品質を認められ、保証されていると言うことだ。世界品質であるからこそ国内一位の座を確保できたのである。

初の文部科学省「職業実践力育成プログラム」に認定

名古屋商科大学のMBAは国外だけで評価されているのではない。日本の教育再生に政府が着手した中で、まずは社会人の職業に必要な能力の向上を図る機会を拡大すべきと、大学等で社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムを「職業実践力育成プログラム」(BP)として文部科学省が認定を始めた。

名古屋商科大学のMBAはこのプログラムに認定された。これは.社会人の学び直す選択肢が増え、また企業からも評価される魅力的なプログラムであり、また厚生労働省の教育訓練給付制度とも連携することで社会人の学び直しを推進するプログラムを認証するものだ。

名古屋商科大学は大学名には名古屋を冠するものの、名古屋だけではなく大阪や東京にもキャンパスがあり、週末だけのMBAコースがある事も魅力的だ。社会人が勤務先を辞める事無くMBAを取得することが出来る事が文部科学省にも評価された形だ。

幅広いバックグラウンドによる学生間での切磋琢磨

名古屋商科大学の学生の年齢分布は、30代が約5割、40代が約4割となっており、ビジネスの最前線で活躍している世代が大半を占めている。

またその職業も様々だ。製造・卸売りが23%、医療・薬が21%、卸・小売が17%、サービスが9%と様々な職種の学生達が一堂に集い、議論を白熱させる。

自らの業界・会社での「当たり前」が他業種では「当たり前では無い」等の気づきから、新しいビジネスモデルや考え方が生まれてくる、学生間での切磋琢磨が行いやすい学生のバックグラウンドになっている。

また学生間の議論をさせる教員も9割以上が実務家である為、現実離れした学術に特化した話ではなく、実際に次の日から業務に活用できる講義が行われている事も魅力だ。同窓生が学友であると同時に相談相手にもなっている事が教育の質向上につながり、MBAとしての評価の高さに影響している。

繰り返しになるが、名古屋商科大学は学部の偏差値は35。難関大学とは言い難い偏差値だ。しかし大学院、MBAは世界では慶應義塾大学のMBAと並び評価・認定されている。国内でも文部科学省から職業実践力がつくと認証されている。国内外双方からお墨付きがあるMBAだ。

アメリカのMBAトップのハーバード大学のビジネススクールは“資本主義の士官学校”と言われ、OBがアメリカ経済をけん引していると言われている。これからの日本経済をけん引するリーダーの中に、名古屋商科大学MBA修了生がいても決しておかしくない。

岸 泰裕 (きし やすひろ)
元外資系金融機関勤務 現在、大学非常勤講師

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