不動産投資
(写真=PIXTA)

不動産投資を始めようと思った矢先、周囲から「投資にはリスクがある」と水を差すようなことを聞かされてうんざりしている人も多いと思う。投資にはリスクは付き物だということは知っているが、では具体的に不動産投資のリスクとは何なのかを答えられる人は多くはない。あらかじめ不動産投資のリスクが分かっていれば、それを避ける、もしくは最小限に抑えるという行動をすることも可能だ。そこで今回は不動産投資のリスクについて、紹介していきたい。

最初に知っておきたい「空室リスク」

最初に不動産投資で知っておきたいリスクは空室リスクと言える。不動産賃貸業はいわゆる装置産業のため、不動産という装置に維持コストが発生し続ける。具体的には、固定資産税や都市計画税、保険料、清掃費や設備点検費用などの維持管理費用などだ。

これらの固定費は賃料収入の有無に関わらず発生する。そのため空室が生じると、ゼロでは済まなくなり、マイナスの収支になる。このような事態を避けるために、空室率の低いエリアや物件を選ぶことが重要である。

経年で高まる「賃料下落リスク」

2番目としては、賃料下落リスクだ。建物は経年と共に古くなっていくが、古い建物は賃料が安くなってくる。築古の建物の賃料が安くなる原因は、技術の進歩により昔の建物の仕様は人気が落ちてしまうからだ。

例えば、賃貸マンションであれば30年前はバスとトイレ、洗面が一緒になった3点ユニットが当たり前であったが、今では3点ユニットは需要が低い。オフィスでも古い物件は天井高が低く、OAフロアも未対応で、専有部内の柱も多いため需要が低い。このように古い建物と言うのは、周りの新築物件に比べて仕様も古くなっていくため、賃貸需要が弱くなっていく。物件は購入した時点が一番新しいことを考慮すると、年々、賃料下落リスクは高まっていくということになる。

日常的なものからリノベーションまで「修繕リスク」

3番目としては、修繕リスクである。これも建物の築年数と共に高まっていくリスクだ。築年数が古くなっていくと、日常的な小修繕に加え、大規模修繕の発生してくる。特に設備の耐用年数は15年程度が一つの目安のため、築15年以上の建物については、設備の交換などの修繕も増えてくる。

また、空室にも関連するが、長期間にわたって入居者が入らない状態が続けば、リフォームやリノベーションを行う必要性も出てくる。リノベーションをする際、一部入居者が残っている場合は、立退きも発生するケースがある。そうなると、リノベーション費用に加え、立退料も必要となり、コストも時間もかかってしまうのだ。

迷惑行為をどう防ぐ?「入居者リスク」

4番目としては、入居者リスクだ。入居者リスクとは賃料を払わない、部屋をゴミだらけにする、騒音で近所に迷惑をかけるなどの、迷惑行為をする悪質入居者が入ってしまうことだ。借地借家法では入居者である賃借人が強固に守られているため、すぐに退去させることができるとは限らない。

例えば賃料不払いにおいても、一般的に3ヶ月以上滞納が続いた場合には、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたとして立退きがようやく実行できるケースが多い。入居者トラブルに関しては、入居審査を厳しくすることでリスクを抑えることが可能だ。しかしながら、入居審査を厳しくすることは、部屋を埋めにくくすることでもあり、空室対策と相反する部分であるため、加減は意外にも難しいのだ。

売却したいと思っても…「価格下落リスク」

5つ目としては、物件の価格下落リスクだ。不動産投資が上手くいかなくなって、いざ売却しようとした時に、購入当時の金額よりも価格が下落しているリスクである。

このような場合、借入金が返済し終わっていれば良いが、借入金が残っている場合、借入金よりも売却額の方が低いというケースもある。基本的には、購入時よりも売却時の方が建物は古くなっているはずであるから、価格が下落しているのは当然と言える。加えて土地価格が下落し続けているようなエリアでは、さらに物件価格が下落するため、価格下落リスクは強まってしまう。

全てのリスクは「空室」から

以上、不動産投資における代表的なリスクとして、①空室リスク、②賃料下落リスク、③修繕リスク、④入居者リスク、⑤価格下落リスクを見てきた。これらのリスクの中で、最も重要なのは空室リスクだ。

空室リスクが全てのリスクを引き起こしていると言っても過言ではない。空室が多ければ、賃料も下がり、空室対策としてリノベーションなどの大規模な修繕が発生し、空室対策として入居基準を緩めたことで悪質テナントが入り、空室だらけの物件を売却しようとしたら価格が大幅に下落していた、という流れになる。

逆に言えば、空室リスクを最小限にするという観点を持てば、他のリスクも最小限に抑えることができる。もちろん、空室リスクをゼロにするということは不可能だ。一棟貸しであっても、退去してしまったら一気に空室を抱えることになる。

不動産投資においては、空室率が5%程度であれば、順調な賃貸物件と言える。立地を厳選して空室率が5%以内の物件を選ぶことで、他のリスクも網羅的に抑えていくことができる。不動産投資のリスクは投資をした後に、「知らなかった」では済まされない。リスクとは何か、それはどうやったら防げるのかを知ることが、不動産投資を成功へと導くことになるだろう。

不動産鑑定士&中小企業診断士 竹内 英二(株式会社グロープロフィット 代表取締役)

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