(写真=PIXTA)
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1月1日から申し込みが始まったジュニアNISAは、4月から運用が始まる小額投資非課税制度(NISA)の未成年向け制度だ。19歳までの未成年を対象に株式や投資信託へ投資した利益を非課税とする制度で、年間80万円までが非課税になる。既に20歳以上を対象にした大人版NISAの運用が始まっており、年間100万年までが非課税となっているが、なぜ今回ジュニアNISAとして未成年向けの制度が始まったのであろうか。

大人版NISAの投資枠を増加させる形ではいけなかったのか。今回は欧米の教育資金積立制度との違いを探ってみよう。

ジュニアNISAの手本となった英国のジュニアISA

今回導入されるジュニアNISA、また大人向けNISA双方の手本となったのが英国のジュニアISA制度およびISA制度だ。ジュニアISA制度も18歳までの子供を対象にした貯蓄制度だが、子供の将来へ向けた資産形成を大人がするためという視点だ。

このジュニアISAはあくまで家計、大人が子供貯蓄を行うことを目的としており、使途が限定はされていないが実際には大学への入学金・学費資金を作る為の制度として利用されている。従来、英国では同様に子供のための資産形成をサポートする仕組みとして、チャイルド・トラスト・ファンド(CFT)が導入されており、政府より給付金が支払われていた。

しかし財政上の問題から給付制度を廃止したことで、子供のための資産形成は家計による自助努力で行うジュニアISAが導入された形だ。世界各国において財政難による大学への補助金削減や国際競争の高まりから大学の授業料が上がり続けている反面、グローバル社会の中で高等教育は必須となっているため、英国は政府として子供の為の資産形成支援を行っている形だ。

オバマ大統領も娘に利用、米国の大学教育資金貯蓄「529プラン」

米国では大学教育に特化したプラン「529プラン」が存在している。これはジュニアNISAやジュニアISAとは異なり年齢制限がない。米国の場合は社会に出てから、再度の大学・大学院での学びなおしが一般化されている為に年齢制限をかけていないのだ。

米国では日本以上に大学は出ていて当たり前という社会となっており、大学進学率が7割を超えている。大学は高等教育ではなく、社会人としての必須な教育としてみなされている為に、大学教育に対しては州単位で幅広いサポートが行われている。その一つが529プランだ。

これも口座へ家計が拠出をし、株式や投資信託で運用する制度であり、利益に対しては非課税となっているが、資金の引き出しが高等教育での教育費でしか利用が出来ず、授業料や教科書代など、利用できる項目が内国歳入庁で定められている。加入に対するハードルは低いが、引き出しに対しては極めて厳格に行われ、教育費以外に利用された場合にはさかのぼって課税されるだけでなく、ペナルティ課税も行われる。

ただし州によっては奨学金等も529プランに対して提供している所もあるため、高等教育目的では極めて利用メリットが高く、オバマ大統領も自らの娘に対して利用していることで話題にもなった制度だ。

金融庁の悲願、「貯蓄から投資へ」の実現へ?

金融庁は大蔵省時代より「貯蓄から投資へ」を数十年唱え続け、投資家の拡大を目指している。NISAも投資家の裾野を広げる為として導入がされたが、実際には既存の投資家による口座開設の割合が多く、投資家の拡大にはつながらなかった形だ。

現在、ジュニアNISAの導入に係り、各金融機関は子供時代から投資を身近に考えさせる機会としてジュニアNISAの口座開設営業に奔走している。

しかし、各国の子供向け貯蓄制度、教育資金積立制度を見ると、子供自身が支出、投資判断を行っている事例はほとんど見られず、家計、大人が運用を行っている。ジュニアNISAの導入により投資家を子供の時から養成するという目的を達成する為には、よりしっかりとした金融リテラシー教育プランの充実が必要となると考えられる。ジュニアNISAにより投資家裾野が広がるという甘い幻想は金融庁・金融機関も再考する必要があるだろう。

2016年4月から運用が始まるジュニアNISAは、各国の制度目的とは異なり、教育資金の積立サポート面よりも、投資家裾野を広げたい金融庁や金融機関の思惑が透けて見える制度となっている。

しかし教育という、言わば絶対必要な費用を、かねてより余裕資金で運用すべきという投資で準備をすべきとの価値観の方向転換と仕組みづくりは、余裕資金が豊富にある既存の投資家にとっては利用価値があるが、真に教育資金を積み立てる必要がある層に対しては利用ニーズが見えにくい。

ジュニアNISAはまだ実際の運用が開始されておらず、制度の課題がまだ表面化していないが、今後の制度の修正変更によって、教育資金積立制度としての更なる利便性の向上が行われれば、利用者が拡大し投資家の拡大にもつながるだろう。ジュニアNISAがどの様に国民に受け入れられていくのか、注目していきたい。

岸 泰裕 (きし やすひろ)元外資系金融機関勤務 現在、大学非常勤講師

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