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投資の応用
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【或る銀行員の寄稿】

仕掛けられた「黒田マジック」マイナス金利の虚構

(写真=Getty Images)
(写真=Getty Images)

日銀が持っているカードは2つ。「追加金融緩和」と「マイナス金利」。まさか、ここでカードを切ることは無いだろうと思われていた。どのタイミングでカードを切るか。できるだけカードは温存しておきたいはずだ。ところが、日銀は先週29日の金融政策決定会合で追加的な金融緩和策として「マイナス金利政策」のカードを切った。不意を突かれたマーケットは動揺を隠せなかった。

ーー2014年10月31日、あの日も月末の最終取引日だった。多くの投資家は条件反射のように買い注文を出した。しかし、今回はマイナス金利をどのように評価すべきか誰にも分からなかった。日経平均株価は急騰後、前日比マイナスまで急反落。そして大引けにかけては再び大幅高へと値を戻す荒い展開となった。

市場を混乱させた「マイナス金利」が意味するもの

混乱は株式市場だけでは無かった。外国為替市場では円相場が急落し、債券市場では国債が買われ、長期金利は史上最低を更新した。これだけ市場を混乱させたマイナス金利とは一体どういうものなのか。

マイナス金利政策とは中央銀行が政策金利を0%よりも低い水準にする金融政策だ。民間銀行は日銀に資金を預けると、金利を支払う必要が出てくるため、民間企業の融資や有価証券の購入に資金を振り向ける効果が期待される。つまり、中央銀行が供給した資金を実体経済に回りやすくすることが狙いであり。間接的に金利を引き下げる効果は期待できるが、家計や企業が民間銀行に預ける預金金利をマイナスにするわけではない。

誰が得をして、誰が損をするのか?

問題は誰が得をして、誰が損をするのか。投資家はいつもそう考える。マイナス金利で特をするのは、巨額の資金を借り入れる必要がある不動産業だ。総量規制により不動産向けの融資が規制されたことがバブル崩壊につながったのとは、全く逆の現象が起こるのでは無いかと多くの投資家が考えた。マイナス金利によって、不動産業界にコストの安い資金がなだれ込むことが連想された。不動産株は大幅上昇し、三菱地所 <8802> は前日比10.3%と急騰。不動産業は業種別騰落率のトップだった。次に買われたのが証券株だった。

それに対し損をするのは銀行だ。活況を呈するマーケットの中で銀行業だけがマイナス圏に沈む結果となった。銀行は日銀の当座預金に資金を預ければ、0.1%の金利を手にすることができた。リスクを取って貸出金を増やすよりも、ノーリスクで0.1%の金利がつくのだ。どんなに金融緩和政策をとっても一向に市中に資金が供給されない、その真犯人はまさにこの仕組みだったのだ。日銀の資料によれば、銀行が必ず日銀に預け入れなければならない準備預金残高を除いた超過準備額、いわゆる「ブタ積み」と呼ばれる余剰資金は2015年12月には220兆円を超えている。この金利収入が無くなることは銀行にとって大きな痛手となることは容易に想像出来る。

虚構に翻弄される市場参加者

ブタ積みの220兆円が市中に供給され、それが設備投資などにまわれば、経済は好循環するだろう。多くの投資家がそう考えるのは当然だ。しかし、日銀の意図は必ずしもそうでは無かった。今回のマイナス金利の導入に当たっては、 金融機関収益が圧迫され、それが金融仲介機能の低下を招くことの無いよう配慮がなされていた。具体的には3段階の「階層構造」を採用し、ある残高までは、これまで同様の0.1%の金利をつけ、 ある残高まではゼロ金利とし、さらにそれを超過する部分にマイナス金利が適用されるのだ。

では、実際にどれだけの金額にマイナス金利が適用されるのか。日銀は現在既に預けられている当座預金にはマイナス金利は適用せず、マネタリーベースの拡大(現在の方針は年間約80兆円の増加)に伴って、当座預金残高は、マクロ的に増加していくことになる。こうしたもとで、 マイナス金利が適用される部分が適切な規模となるように、適宜のタイミンクグでゼロ金利が適用される部分を増加させるという見解を示している。 過去1年間の超過準備額の増加額は約68兆円。つまり、現在の状況が続いても、実際にマイナス金利が適用されることは無いのかも知れない。従って、銀行株が下落した背景にあるような事態が発生する可能性は極めて低いと考えられる。

冷静に考えれば、今回の日銀の発表は実に中身の無いものだ。投資家はこの中身の無い発言に踊らされたことになる。

日本の金融政策は前人未踏の領域に突入した

名ばかりとはいえ、マイナス金利は劇薬だ。実際に日銀審議委員の多数決では賛成5、反対4と意見が分かれている。すでに史上最低の金利となっているが、マイナス金利導入が国債市場に今後どのような影響を及ぼすのか誰にも想像できない。本当にこれからもうまくコントロールが可能なのだろうか。いつか、臨界点が訪れ、国債の暴落というとんでもない事態に陥ることは無いのだろうか。そして、本当の意味でマイナス金利が実施されたなら、市中に資金を供給する役割を果たす銀行の体力が奪われることは明白だ。それはかえって資金の好循環を妨げる要因とならないだろうか。いずれにしても、日本の金融政策は前人未踏の領域に突入したことは確かである。

黒田マジックのタネが明かされたとき、マイナス金利の虚構も暴かれる。そのとき、マーケットは再び混乱し、下値を模索する展開となる危険性が高まる。(或る銀行員)

※「或る銀行員の独白」は毎週水曜日20時に好評連載中です。

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