(写真=Thinkstock/Getty Images)
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新聞やマネー誌など多くのメディアで特集が組まれ、NISAに関する話題に事欠かない。どのような株や投資信託がNISAやジュニアNISAに適しているかというテーマが多いが、なかには首をかしげたくなるような記事がある。NISA関連記事の需要があるので、NISAと関連づければ何でもアリという印象を与えるような内容のものもある。投資とはそんな単純なものではない。投資とはそんな甘い話ではない。銀行の金融商品販売に携わる私は、そんな記事を目にする度に、強烈な違和感を覚えずにはいられない。

「難解で複雑な仕組み」のジュニアNISA

そもそもジュニアNISAとは何なのか。今年から新しく始まった制度であり、未成年(19歳まで)を対象に、年間80万円分の投資枠から得られた譲渡益、分配金・配当金に対して、税金が非課税になる。既存のNISAでは未成年者名義の口座で取引を行うことができなかったが、これにより未成年の名義での取引が可能になる。

ジュニアNISA口座で購入した上場株式・株式投資信託等の配当金・分配金・譲渡益が、最長5年間非課税となる点はNISAの制度と同じだ。ジュニアNISA口座で投資できる金額は、年間80万円までで、2016年から2023年の8年間投資が可能だ。

その一方で、少々難解なルールもある。ジュニアNISA口座からの払出しは、子供が3月31日時点で18歳である年の前年の12月末までできない。18歳未満で払出す場合には、全部解約(ジュニアNISA口座の廃止)のみ可能で、ジュニアNISAで享受した過去の利益に対し課税される。20歳になる前にジュニアNISA制度が終了してしまう場合には、非課税のまま継続保有を可能とするために、ロールオーバー専用の継続管理勘定が設けられる。このようにジュニアNISAの仕組みは複雑だ。だからこそ、ジュニアNISA関連記事の需要があるともいえる。

長期投資は万能ではない

多くの金融機関や専門家がジュニアNISAの利用方法としてあげているのは、子供の教育資金運用と贈与税の基礎控除(年間110万円)を利用した贈与だ。確かにこれらは至極真っ当で文句の付けようもない。

だが、彼らは次第にアドバイスがエスカレートする。NISAの制度解説の次には、NISAに相応しい投資信託、NISAに相応しい株の推奨だ。既存のNISAで最長5年、ジュニアNISAではさらに長期間投資を行うことになる。

あなたは5年前、10年前のマーケットの様子を思い出すことができるだろうか。10年前、あなたはリーマンショックを予想することができただろうか。さらに、その後の新興国・資源国投資の盛り上がりと衰退を予想できただろうか。かつて圧倒的な人気を集めたグローバルソブリン・オープンの衰退を予想し得たであろうか。

個別株となると更に将来を予想することは難しい。資産株として安定的な人気があった電力株は震災でどうなったか。優待券が魅力の空運株だが日本航空の株はどうであろう。

確かに大きく下落した投資信託や株も長期投資が報われることとなったケースもあるだろう。しかし、長期投資のリスクも多くの投資家は味わったはずだ。世界は常にリスクにさらされている。それが現実だ。にもかかわらず長期投資が万能であるかのような考え方を押しつけるのはいかがなものだろう。繰り返すが、投資とはそんな単純なものではない。投資とはそんな甘いものではない。そこで推奨される金融商品が5年後、10年後も魅力的である保証はどこにも無いのだ。

メディアが果たすべき社会的責任を忘れるな

個人投資家が入手できる情報は銀行や証券会社経由のものがほとんどだ。それらの多くは、あわよくば金融商品販売に結びつけたいという思惑が透けて見える。「本当にNISAで株や投資信託を購入することが良いのだろうか」スタートして間もない制度だけにそんな迷いを持っている人もいるだろう。

ジュニアNISAとなると、なおのこと個人投資家が持つ情報は少なくなる。そこで、マネー誌などを参考にしようとするのはごく当然の成り行きだ。こうした需要に応えるべく、NISAネタが乱発されている感がある。しかし、大量生産される記事のなかには、読者に与えるインパクトを優先しているものが散見されるのも事実だ。

メディアは公正中立な立場で情報を伝える使命があるし、専門家は順法精神に基づき、顧客の利益を最優先しなければならない。しかし、その使命よりも、より注目度の高い記事を書き、それを掲載することに彼らは重点を置いているようにさえ感じられるのだ。

NISAやジュニアNISAといった新しい制度についてメディアが大きく取り上げることの意義は確かにあるだろう。しかし、それ以上に証券税制が改正され実質的に投資家に対する課税が強化されているという「不都合な真実」を投資家に知らしめること、そして投資家にとって、将来の日本にとって望ましい制度のあり方を国民が議論する環境を作ることの重要性を考えるべきだ。(或る銀行員)

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