生命保険,見直し
(写真=Thinkstock/Getty Images)

「就職したのに、何の保険にも入っていないだって? いつまで学生気分でいるんだ。社会に出たら、保険くらい入っておくのが常識だろう。そんなことじゃ、社会人としての責任を果たせないぞ…」こんなセリフを耳にすることがある。

説教するご本人は当然だと言わんばかりの口ぶりだが、私は首を傾げてしまう。たしかに、社会人になったら責任を自覚すべきだろう。しかし、保険に入ることと責任感とに、いったいどんな関連があるのか皆目わからない。

保険というのは「万が一の際に発生する経済的損失をお金で補うもの」であって、責任感とは無関係ではないか。日本では保険に入るのが当たり前だと思っている人が実に多い。そのせいで、保険に入っていないと自己管理ができていないなどという目で見られてしまうわけだ。果たして、これは正しい考え方なのだろうか。

ここでちょっと世界に目を向けてみよう。保険料の総額で比較すると、1位がアメリカ、2位が日本、3位がイギリス、4位がフランスとなっている。どこの国でも保険は利用されているのだが、死亡保険への加入者がダントツに多いのは日本だけである。

1000万円を超える「お守り」が欲しいですか?

なかには、保険を安心のための「お守り」のように考えている人も少なくない。ただ、そんな人たちも支払っている保険料を知ればギョッとすると思う。

生命保険文化センターの調査によれば、一世帯あたりの年間平均は38.5万円。毎月、銀行口座から引き落とされるので、払っている実感すら湧きにくいかもしれない。ところが、これを40年間払い続けると、なんと1540万円になる。実は、保険は1000~2000万円もする高額商品なのだ。これが「保険は家の次に高い買い物」だと言われる所以である。

この金額を知ってもなお、お守りが欲しくなるだろうか。少なくとも私は、お守りに何千万円もつぎ込む気はしない。安心を願うなら、初詣で買う2000円の家内安全のお札で十分だ。

すべての「心配」を保険で解決するのはナンセンス

もちろん、不測の事態に備えることは大切で、それには保険が有効なときもある。とはいえ、保険は「何となく」「適当に」入っておけばいいというものではない。それぞれの目的に応じた保険があるのだ。

目的をはっきりさせるには、まず「誰のため」に入るのかを考えてほしい。滅多に起こらないけれど、それが起きたら非常に大きな損失が出る。そのリスクに備えるのが保険の本来の目的である。言うまでもなくいちばん大きな損失は死亡だが、自分が亡くなって経済的に困る人がいなければ死亡保険は必要ない。

独身で扶養家族もない人が死亡保険に入るのは単なるお金の無駄。社会人になったからといって、慌てて保険に加入することにまったく意味はないのだ。保険料を払うより、キャリアアップや趣味など自分磨きにお金を使ったほうがずっと有効である。

長い人生の中ではケガや病気、教育、老後の生活、介護など、お金の心配を数え上げたら切りがない。けれど、すべてを保険で解決しようとするのはナンセンス。いくらお金があっても足りないだろう。保険料に圧迫されて苦しい生活を送っては本末転倒だ。

「将来のリスク」をどのようにコントロールするか

起こりうるリスクに対して過不足なく備えるためには、本当に必要な保険を見極めることが肝心である。万人に最適な保険は存在しないのだ。それを見極めるときには家計のリスクコントロールが重要なカギになってくる。家計におけるリスクを、「リスクの転換」「リスクの保有」「リスクの軽減」に分けてみるのだ。

「リスクの転換」は、文字通りリスクを移し替えること。自分ではどうしようもない問題が発生したときのリスクを人任せにするのである。小さな子どもを残して亡くなったら、家族の生活費や子どもの教育費が将来にわたって何千万円も必要になる。子どもが2人、3人と増えれば、その額もさらに膨らむだろう。ここまでの金額をすべて自分で準備しておくのは難しい。こうした大きな損失こそ、保険の出番だ。

「リスクの保有」は、小さな損失は自分の中で処理すること。ときには起こるかもしれないけれど、あまり損失が大きくならない場合だ。たとえば、短期の入院や手術がこれに当たる。こういったケースは20〜30万円の蓄えがあれば、たいてい何とかなるはずである。

病気やケガに対しては医療保険という心強い味方があるじゃないかと思いがちだが、医療保険は入院・手術にしか対応できない。一方、貯蓄なら治療費はもとより、通院費、介護費用など、どんな用途にでも使えるので便利だ。病気やケガに限らず、小さな損失に対しては貯蓄でも備えておきたい。

「リスクの軽減」は、日頃から損失が起こらないように気をつけること。たとえば、運動やバランスのいい食生活に気を配れば、病気にかかるリスクが減る。ひいては、医療費の節約にもつながるわけだ。また、高齢化が進む現在、介護は大きな問題でもある。公的介護保険があるとはいえ、金銭的な負担はけっして小さくない。しかし、健康な身体を保つことができれば、介護というリスクも減らせるだろう。

滅多に起こらないけれど、それが起こったときには大きな損失になる。そういったフォローしきれない大きな損失だけに保険を使うのが賢い方法だ。それ以外は、保険に入らないという選択肢を持ってほしいものである。

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『お金のツボ』(モバイルメディアリサーチ)『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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