(写真=PIXTA)
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英政府が国雇用および技能委員会の管理のもと運営する非営利リクルート研究所、インベスターズ・イン・ピープルが実施した調査では、回答者の2000人の5分の1が既に転職活動を行っており、今年中に1530万人が転職を検討することが予想されている。

英国における「転職ブーム」は今に始まったことではなく、家庭を持つ一家の大黒柱でさえ、比較的サラッと転職することが珍しくない。

3~5年サイクルで再就職を繰り返す英国人

英国での大まかな転職事情はどのようなものだろう。正確な統計は公表されていないが、転職エージェント、キャリア・ファームの設立者ジェーン・バレット氏は、米国人の生涯を通じた転職回数が平均12回という数字から、多くの英国人も3~5年に1度のペースで「リフレッシュするために」転職を繰り返していると見ている。

この数字に一瞬がく然とした英国在住の筆者が改めて周囲を見渡してみると、確かに「キャリアアップ」と称して転職を繰り返す人々が圧倒的に多く、5年以上同じ勤務先に務めているのはわずか数人だ。

特に「勤務しながら常に職探しをしている」といったケースが非常に多く、若かりし頃何度か足を運んだエージェントのキャリア・アドバイザーに、「実は私も職探し中なの」と何か良い就職口がないか逆に尋ねられたエピソードを思い出す。そう考えると平均12回というのはむしろ謙虚な数字なのかも知れない。

日本とは微妙に異なる「転職のきっかけ」

日本では年代性別を問わず、「給与への不満」が最も一般的な転職理由として挙げられることが多く、次いで「雇用形態への不満」「会社の将来への不安」「職場の人間関係」などキッカケとなるようだ。

一方インベスターズの調査によると、英国では約半数が「マネージメントの悪さ(43%)」を転職の主な理由として挙げているほか、「尊重されている気がしない(39%)」「給与への不満(38%)」「仕事にやり甲斐を感じられない(34%)」「キャリアアップの可能性が低い(29%)」など、どちらかというと精神的なストレスが原因となっているのがわかる。

転職活動の傾向 かたっぱしから応募する人も

昔ながらの情報誌や新聞広告もいまだ健在だが、気軽に素早く応募ができるネットを利用した職探しが主流になっている。複数の転職サイトやエージェントに登録している転職希望者が多いが、雇用側から連絡があるのはほんの一握りだ。

失業率が低下しているとはいえ、現職者や高齢者までが新たな職を求めて活動中の近年、需要(就職希望者)が供給(雇用主)を完全に上回っており、再就職市場は激戦区化している。よほどのキャリアの強者でない限りは、苦戦を強いられることになる。下手な鉄砲形式でかたっぱしから応募し、「面接の連絡があった会社がどの会社なのか覚えていない」というケースも珍しくなく、1年間に600件以上応募した人も筆者の身近にいる。

ジョブセンター(職安)を通した活動も定着しているが、こちらは主に失業者が社会保障給付を受けるために「義務的に通わされる」というイメージが強いせいか、あるいは紹介している職種が販売員や事務員、工場員などをごく一般的なカジュアルワークを中心としているせいか、ハイエンドな再就職を狙うキャリア組はやはりエージェントに足が向くようだ。

メディアを通した再就職活動の盲点

しかし意外にも仕事の募集の約60%は口コミや小売店のウィンドー、ローカルなコミュニティーホールなどの掲示板を利用して行われているというデータがあり、筆者の周囲でも最終的には口コミや小売店に直接出向いて再就職した人々が大半だ。

「買い手市場」である現在は、メディアやエージェンシーに高い広告料や手数料を支払って募集するからには「使える人材」のみを、篩(ふるい)にかける傾向が強く、専門的な職業は勿論、販売員や飲食店スタッフの募集要項にまで「XX年以上の経験者のみ募集」という条件が課されている場合が多いため、年若い再就職希望者や全く畑違いの職への鞍替えを希望している人たちにとっては、厳しいハードルとなる。

一方オフメディアな募集は応募範囲がごく限定されているがゆえに、全国レベルで応募者を募るメディア募集よりは競争率がはるかに低くなる??という最大の利点があるほか、面接などもカジュアルにすませて、経験を含む条件的な面よりもフィーリングで合否が決定するというノリのようだ。

「買い手」趣向の変化

ひと昔前までは高所得へのパスポートだった「大学卒業資格」だが、近年は専門技術や経験を重視する雇用主が増え、「大卒者の5人に1人の所得はAレベル(高校卒業時に受ける公的試験)を所有する高卒者よりも低い」という統計が、既に2011年の時点で英国家統計局の調査から明らかになっている。

こうした背景にはやはり「学歴よりも経験や活きた知識を重視した方がいろいろと都合が良い」という雇用側の事情が表れているように思われる。

そのためキャリアアップを目指す再就職者の間でも、漠然と大学に進学、再入学するよりも、資格コースや専門学校で専門知識を身につける傾向が強まっているようだ。例えば人気の高い金融業界への転職を検討しているのであれば、会計やマネージメントの資格を取得した後、無料で一定の期間実務経験を積むなど、自らを売り込むための努力が必須となってきている。(アレン・琴子、英国在住の フリーライター)

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