米連邦準備制度理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長は2月10日、3時間以上にわたる米下院金融委員会で、不安定な世界市場が米経済の回復に与えるネガティブな影響を示唆する一方、金融緩和へ逆戻りする可能性をキッパリと否定し、軌道修正を加えながら本来の方向性を曲げる余地はないことを明らかにした。

議会証言後、ダウ工業株30種平均は99ポイント安(0.6%減)の1万5914ドルで終了し、4日連続の下落となった。

米CNNはイエレン議長の発言から、2月11日の米上院金融委員会で関心が集まると予想される4つのポイントを抜き出している。

ドル高、借入コストの上昇、米株式相場の混乱

ドル強化による米製造産業へのネガティブな影響は既に「S&P500種指数8.5%下落」という数字に表れており、イエレン議長の最懸念事項となっている。

特に昨年12月に米資産運用会社サード・アベニュー・フォーカス・クレジット・ファンドが破たんして以降、ジャンク債市場で不穏な動きが高まっていることなども要因となり、利息の引き上げや営利貸し付け基準の引き締めが見られることから、「こうした状況の継続は米経済成長の妨げとなる」と指摘した。

アフリカ系米国人の高失業率

雇用率の拡大を主張しているFRBだが、黒色人種の失業率は8.8%と白色人種(4.3%)や国平均(4.9%)と比べてかなり高い水準だ。

中でも深刻化しているアフリカ系米国人の雇用問題に取り組むように、民主党所属議員デヴィッド・スコット氏からイエレン議長に要請がだされたが、イエレン議長は実状を認識しているにも関わらず、「あくまで利上げが最優先事項」という姿勢を崩す様子はない。

米利上げ後の中国経済の減速や先行きの不透明さについては一切歯に衣を着せず、「国際経済成長の足かせとなっている」と非難。

人民元がどこまで下落するのかという懸念を強める一方で、「上昇傾向にある労働賃金が市場の発展につながることを期待している」と前向きに見守る姿勢である。

金利カットの可能性

英市場調査会社キャピタル・エコノミクスに「米利上げに関しては市場以上にタカ派だ」と形容されたイエレン議長は、欧州や日本のようなマイナス金利の導入を2010年に検討したが、「市場への影響を懸念し採用には至らなかった」と、同じ道をたどる可能性を真向から打ち消した。

追加利上げのペースは必要に応じて見直すが、「現在の0.25%から後退する必要はないだろう」と述べるなど、様々な外的影響を受けながらも米経済が緩やかな回復過程にあるという見方を貫いている。(ZUU online 編集部)

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