エネルギー関連与信では、クレジットサイドでネガティブニュースが続いている
1月末から今週にかけ、エネルギー与信に関連する格付け見直しの発表が相次いだ。
ムーディーズは1月21~22日、世界で175社のエネルギー関連企業の格付けを引き下げる方向で見直すと発表した。3月までに大半の結論を出すとしている。大幅な格下げがあれば、財務制限条項(コベナンツ)などによっては、プロジェクト融資の支払い金利が上昇する可能性もある。また、エネルギー与信に対する銀行のリスクウェイトが上昇する場合もあるため、次回の借り換えが困難になるという懸念もある。
続いて2月9日には、S&Pが、米国でエネルギー与信の比率が高い地銀4行 (BOK Financial Corp., Comerica Inc., Cullen/Frost Bankers Inc., Texas Capital Bancshares)を格下げした。しかも、格付けの見通しは全行について「ネガティブ」とされている。
一般に格付けは遅行指数となる傾向がある。しかし、格付けが一定以下に下落してくると、それを見た金融機関や債券投資家が資金を提供できなくなるため、格下げが次の格下げを招くという悪循環に陥ることがある。特に、情報が限られる疑心暗鬼の市場ではその傾向が強い。
当面最大のリスクは、開示の遅れによる市場の「アンカリング効果」
エネルギー関連与信については、現状金融機関の開示がまちまちで、しかも、どの程度のストレスでどの程度の損失が発生するのかについてはあまり開示がない。
今後銀行からの開示が進む可能性はあるものの、それより先に、巨額な損失額の予想などが市場に飛び交うと、市場はその数字にとらわれてしまい、その後小さ目の数字が出ても納得しないことが多い。先に提示された数字がその後の理解をゆがめるという、代表的な認知バイアスの一つ、「アンカリング効果」である。今後の開示のプロセス、格下げの範囲等をみるまでは不透明感が払しょくしにくいだろう。
エネルギー関連与信の現状:一時期の原油価格上昇で大きく拡大、償還額増加へ
エネルギー関連与信は、一時期の原油価格の上昇を受け急成長してきた。例えば米国のエネルギー関連の社債残高は、06年から15年にかけての10年で4.2倍に拡大、金額で、6,000億ドル以上増加した(図4)。特に、原油価格が概ね80ドルから100ドルのレンジの頃に大きく貸出が増加していることがわかる(図5)。
しかも、各業者の負債比率の上昇も影響している点も懸念される(図6)。とりわけ新興国では、ドルの金利上昇もあり、収入と借入の通貨のミスマッチがあれば、米ドルの上昇もマイナスに働く(新興国リスクについては、別途リポートする)。
これらのことから、今後、エネルギー与信の満期時の借り換えは厳しくなると思われる。図7の通り、新興国のエネルギー与信は、来年以降毎年4兆円以上満期を迎えるとみられるため、前述の格付けの動きは重要になってくる。