但し、大手行への影響は限定的。短期的に実体経済に大きく波及するほどの規模ではない
しかし、エネルギー与信の問題は、実体経済に危機をもたらすほどの規模ではないと考えている。G-SIBsでは、与信全体に対するエネルギー関連与信額の割合は、2~5%程度となっている。今週S&Pに格下げされた米地銀では、10%を超える銀行もあったのに比べると(BoK Financial, Cullen/Frost, Hancock Holding など)、コントロール可能なレベルであろう。
プロジェクトによっては、価格の下落についてある程度ヘッジも行われている模様である。米大手銀各行は、1バレル30ドル程度が一定期間以上続いたとしても、与信費用は1,000億円以下に留まると発言している。通期の税引前利益の数%に過ぎないレベルである。更に、前述の通り、リーマンショック後の資本の備蓄もある。
なお、邦銀の海外エネルギー関連与信は15年9月末時点で以下の通り開示されている(図8)。一部の大手行では、原油価格が1バレル30ドル程度に1年間留まったとしても、追加損失は500億円に満たないとコメントしている。悲観シナリオとして、米大手銀と同様の損失が発生すると仮定しても、各行1,000億円前後とみられる。これは今期計画税前利益に対して1桁%程度であり、十分吸収可能である。
まとめ:エネルギー関連の不透明さは今後1,2か月で緩和される
エネルギー関連のリスクについては、格付け会社の判断や今後の決算での与信費用額等、確認すべきデータも多いものの、今後1,2か月のうちに様々な開示が進めば、不透明要因は徐々に緩和に向かうとみられる。とはいえ、こうした不安の払拭は時間との闘いでもある。更なる原油価格下落や、ベネズエラなどの小国の財政不安の他国への伝搬懸念は燻る。次回以降、これらのリスクについても検証したい。
大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券
チーフ・アナリスト
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