東京夜景

90年代、3つのバブルに揺られて〜この20年、日本の億万長者の世界にはどんな変化があったのか? 1/2 〜 の続きです。

前回の記事では、1992年、1997年、2002年の日本の億万長者ランキングを紹介しました。
本日はその続きとして、2007年、2012年のランキングを追ってみようと思います。

1992年〜2002年の間の日本の億万長者の変遷は、時代背景を色濃く反映したものとなっていました。
1992年は当然ですが、土地バブルの影響が大きく不動産関連業の順位が高い傾向にありました。
また1997年のランキングでは、当時の武富士会長、故・武井氏などの個人向け貸金業者や、商工ファンド(現SFCG)の大島氏などの事業者向けの貸金業者がランキングの上位に多く登場します。
1992年と1997年は一見無関係なようですが繋がりがあり、バブル崩壊による銀行の貸出能力の縮小と、民間での資金需要の拡大が、個人向け・事業者向け問わず、貸金業の拡大の契機になったと言われているからです。

90年前後の不動産バブル関連のビリオネアは、森一族など一部の例外を除き、徐々にランキングから姿を消す事になりました。また、貸金業で財を築いた方々も、取り立ての苛烈さや貸出利息の高さ、また保証人制度などの契約形態が社会問題となり、ランキングの上位から多くは姿を消します。

2002年のランキングでは、目立った新興勢力は存在せず、特徴のないランキングに見えるかもしれません。しかしそれは、2001年に起きたITバブル崩壊の影響が大きいといえるでしょう。
ソフトバンクの孫氏や、ファーストリテイリングの柳井氏などの新しいビリオネアが、2000年や2001年はかなり上位に登場しています。孫氏は情報分野での技術革新を背景に、IT事業や通信事業で富を増やし、柳井氏は衣料品業界内でもいち早く中国に工場を持ち、調達の低コスト化で富を増やしました。
90年代、世界のビリオネアの世界では、技術革新によるIT事業か、グローバル化による調達コストの低下で巨富を築く方が次々に出現したのですが、このお二人はそんな時代の波を日本において体現したような存在です。

では、ここから2007年のランキングに続きます。

【参考:その他の億万長者ランキングはこちらになります。】

2013年版フォーブス億万長者トップ30[世界編]~バフェット氏の連続記録止まる~
2013年版フォーブス億万長者トップ20[国内編]~ランキングが語る栄枯盛衰~
この20年、億万長者の世界にはどんな変化があったのか1/3
2002年、グローバル化とIT革命が生んだ大富豪〜この20年、億万長者の世界にはどんな変化があったのか2/3〜
2012年、躍進する新興国とネット企業〜この20年、億万長者の世界にはどんな変化があったのか3/3〜
90年代、3つのバブルに揺られて〜この20年、日本の億万長者の世界にはどんな変化があったのか?1/2〜
いつかは来るバブルの終わり、その時資産を残す人と無くす人の違いとは?〜この20年、日本の億万長者の世界にはどんな変化があったのか2/2〜
中国でのビリオネアや富裕層の最新事情

【2007年 日本の億万長者ランキングTOP10】

2007

順位

名前

所属

業種

資産 ( 億円 )

1

孫正義

ソフトバンク

IT

6960 億円

2

森章

森トラスト

不動産

6840 億円

3

佐治信忠

サントリー

食品

5640 億円

4

毒島邦雄

SANKYO

パチンコ

5280 億円

5

武井家

武富士

消費者金融

5160 億円

6

山内溥

任天堂

ゲーム

4680 億円

7

糸山英太郎

新日本観光

不動産

4560 億円

8

柳井正

ファーストリテイリング

衣料

4440 億円

9

三木谷浩史

楽天

IT

3480 億円

10

滝崎武光

キーエンス

電気機器

3360 億円

2001年のITバブル崩壊により落ち込んだIT勢が、この年の頃には大きく復活を遂げています。1位はソフトバンクの孫氏ですし、楽天の三木谷氏も2006年にTOP10入り、この年も9位となりました。IT勢以外にも、任天堂の山内氏やキーエンスの滝崎氏など、事業家(創業者、または創業者一族)が上位に目立ちます。

2002年〜2007年までは、生活実感は薄かったと言われていますが、史上最長と言われるいざなぎ越え景気と呼ばれる好況期だったため、オーナー系の事業家勢が躍進した形となりました。
経済界では、トヨタ自動車が生産台数でGMを抜いて世界第1位となるなど、明るいニュースも目立ちます。

ただしこの年のビリオネアランキングは、日本にとってネガティブなニュースもありました。
この年のランキングにて、西武の堤氏がランキング(資産10億$以上)から転落をされます。堤氏は87年にフォーブスのビリオネアランキングが始まって初年に世界1位、その後も計6回1位を取りました。
また、この年に日本のビリオネア数がインドに抜かれ、日本はビリオネア数アジアの首位の座から転落する事になります。

そして翌2008年には、リーマンショックにより日本の好況期は終わりを告げます。