地銀
(写真=PIXTA)

都道府県のトップ地銀同士の初統合は株式市場も好意的に迎えた

肥後銀行(熊本県)と鹿児島銀行(鹿児島県)が、2015年10月1日に経営統合して両行の共同持ち株会社である九州フィナンシャルグループ(鹿児島県)の傘下に入った。これまでも地銀同士の統合はあったが、都道府県のトップ地銀同士では初めてということで大きな話題となったのは記憶に新しいところだ。

この統合で総資産は8兆3000億円を超え、全国で9位、九州では西日本シティ銀行(福岡県)を抜き第2位の地銀グループが誕生した。今回の統合は、2007年に福岡銀行(福岡県)と熊本ファミリー銀行(熊本県)、親和銀行(長崎県)が統合し発足したふくおかフィナンシャルグループ(福岡県)の例のように、経営難に陥った地銀の救済を目的とした「救済型」の再編とは全く異なり、新たな地域金融機関再編のモデルとして注目されている。実際に両行の株価は、2014年11月の統合発表から統合による売買最終日までに50%近く上昇した。マーケットは、経営統合を好材料と見たのである。

地銀が証券子会社を設立する理由とは

地銀の再編・統合後の流れの一つに、証券子会社設立がある。その理由を解説しよう。2013年3月に日銀の黒田東彦総裁が導入した「量的・質的金融緩和」は、株式・為替・債券などの市場に大きな影響を及ぼした。

日銀による巨額の国債買入れによって、もともと低かった金利がさらに低下することになる。最近では、当時0%台後半だった新発10年国債利回りは0%台前半にまで低下しており、上昇する気配は感じられない。

当然だが、銀行が伝統的に収益源としている貸出金利にも低下圧力がかかり、さらには、銀行が持つ余剰資金の投資先である国債の利回りが下がることは、運用パフォーマンスにもマイナスの影響を与える。今回、日銀が導入したマイナス金利政策の直接的な影響は小さいと思われるものの、低金利の継続は銀行にとって収益力の低下に繋がるのだ。

加えて日本では、世界でも類を見ない勢いで少子高齢化と人口減少が進んでいる。都市部以上にこの傾向が顕著な地方を地盤とする地方銀行は、長期的な収益力の低下も懸念しているのだ。

一方、日銀によるETF(上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)などの買入れなどから、投資家がリスク商品への投資熱を高めた結果、これらの価格にプラスの影響が生まれた。投資信託協会によると、2015年5月には投資信託の残高が初めて100兆円を突破し、東京株式市場でもITバブル期以来18年ぶりに日経平均株価は2万円台を記録している。

これらを背景に、近年は顧客も貯蓄から、より利回りが高い投資や金融商品へと関心が移ってきている。そこで地銀が証券子会社を設立すれば、顧客に対してワンストップでさまざまな金融商品を提供できることが可能になるのだ。その結果、地銀も収益機会を広げられるのと同時に、顧客のニーズにも応えられるようになるわけである。

金融庁などの「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと、個人金融資産を活発に運用させ市場にスムーズに投資資金が流動するように金融構造改革が行われてきたが、これは銀行などの金融機関が主人公となる間接金融から証券会社を通じて投資家やお金そのものが主体となる直接金融へと個人資産をシフトさせるという意味を持っている。

地方創生の役割は地銀が担っている

地銀は地元企業へ投資を行うなど、貸出し以外の収益源を探しながら、余剰資金の運用技術を向上させる必要がある。高齢化社会に求められるサービスを提供できる企業の発掘・育成も急務だろう。他にも、多様化する顧客のニーズに応えられる金融機関になるためには人材育成も行わなければならない。

こうしてみていくと、地銀再編の流れは政府が掲げる「地方創生」にも沿うものであることがよくわかる。地方創生とは、地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会をかたちづくることだ。

これは地域において「ひと」を育て、「しごと」を生み出し、「まち」の集約・活性化を図ると言い換えても良いだろう。つまり地域がそれぞれの人口動向や産業実態を踏まえた上で「地方版総合戦略」を策定することが必要になってくる。その一端を地銀が担っているのだ。新しい発想やアイディアによって、地域内外の資源を組み合わせ、価値創造につなげる上で必要な人材、情報、資金を地域にいかにして取り込むかが課題であるのは、地方創生も地銀再編も同じである。(提供: nezas

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