東京など首都圏1都3県で急増すると予想される高齢者を地方へ移す日本版CCRC構想が、本格的に動きだした。全国263の地方自治体が受け入れの意向を示し、新潟県南魚沼市、山梨県都留市など本格的な受け入れ準備を進めるところも出ている。
受け入れを進める自治体は高齢者が安心して暮らせる「生涯活躍のまち」の建設を地方創生に結びつけたい考えだが、都会の高齢者を地方へ押しつける「平成の姥捨て山」と批判する声も少なくない。日本版CCRC構想は地方に何をもたらすのだろうか。
首都圏の介護施設13万人分が不足
CCRC(Continuing Care Retirement Community)とは継続的なケアを受けられる高齢者の地域共同体を指す米国生まれの言葉で、健康なうちから移住し、医療や介護を受けながら活動的に暮らす終の住みかと位置づけられている。
民間の有識者会議でつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務相)が2015年末、首都圏に住む50代以上を地方へ移すべきだとする最終報告をまとめたのを受け、政府は必要な法整備に入った。
日本創成会議によると、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県では、高度経済成長期に流入した住民の多くが高齢化し、2025年に75歳以上の後期高齢者が10年前と比べて175万人増えると予測されている。
2025年までの介護需要は東京38%増、神奈川48%増、埼玉52%増、千葉50%増と見込まれ、ともに全国平均の32%増を大幅に上回る。2025年に1都3県で必要とされる介護施設のベッド数は46万床。2015年現在で33万床しかないため、13万人分が不足することになる。
日本創成会議は高齢者の移住候補地として北海道函館市、富山県富山市、和歌山県和歌山市、香川県坂出市、佐賀県鳥栖市など33地域、介護施設の追加整備で受け入れ可能になる準候補地として岩手県盛岡市、山口県下関市、長崎県長崎市など8地域を挙げている。
首都圏の介護施設不足を解決するとともに、人口減少が進む地方へ高齢者が移住することにより、地域の活性化を促すのが狙いだ。このため、政府は日本版CCRCを「生涯活躍のまち」とし、地方創生の柱の1つに位置づけた。