インド,新興国投資
(写真=PIXTA)

高リスク高リターンの新興国投資に対する英投資家の反応は、「Buy(買い)」と「Avoid(回避)」にキッパリと二分されている。

かつて新興国株は、先進国株よりも値動きが大きいことから、長期投資を好む若い独身者などごく一部の層を対象とした「マニア向け」として認識されていた。だが変化の兆しが現れ、年金受領者を含む幅広い世代が新興国を含むリスク投資に興味を示し始めている。

新興国株安の今が買い時?

資源安、原油安の影響で新興国株が値下がりしていることを理由に、英国の投資アドバイザーやメディアは若い世代はもちろん、年金受給者にまで「自分の老後は自分でつくる時代」と新興国投資を推奨している。

「失うリスク」が周囲におよぼす影響が少ない若い世代は将来への先行投資として新興国を選ぶ傾向がある。しかし守るべき大切な年金をあえて高リスクな新興国へ投じる年配者の心理的背景には、年々給付開始年齢が引き上げられていく英国の老齢基礎年金(終身年金)制度に対する不安感があるようだ。

人気は急成長中の原油輸入国。なかでも昨年は低迷中の中国を上回る経済成長率を弾き出したインドは、ゴールドマン・サックスも肩入れしている「現在、新興国で最も手堅い投資先」といわれており、見通しの不透明な中国から勢いづいたインドへ資金を移す投資家が急増中だ。

また不動産投資の対象としても英国人に大人気のトルコが、英大手保険会社、Avivaなど「投資のプロ」のお気に入り新興国として注目を浴びているほか、インド同様中流階層に増加が見られるインドネシア、労働力のある若年層の拡大が目立つベトナムなどへの投資に火がつきそうだ。

英国人はポートフォリオの1割弱しか投資していない

英国における新興国市場への投資は、有望株を見極める目によほどの自信がないかぎり、安定型商品とのリスク分散が定番となっている。

英テレグラフ紙が現在何らかの投資活動を行っている英国人を対象に実施したミニ・サーベイによると、新興国株が所有ポートフォリオを占める割合は「0.5割から1割」が最も多く33%。

次いで「1割から2割」が21%、「2割から3割」が14%。5割以上の大胆な賭けに投じている回答者は8%。逆にまったく新興国株に手を出していない回答者は20%という結果だ。

JPモルガンの新興市場収益ファンド部門のマネージャー、リチャード・ティザリントン氏は、新興国投資の核はあくまでリスクとの闘いにあるという点を明確にしている。それは新興国投資では銘柄選びが配当率を非常に大きく左右するためだ。

ティザリントン氏はまた「投資の目的や状況をしっかりと把握して、銘柄選びには十分に時間をかけること」「ドル高が進行している間は新興市場からの見返りを期待しすぎないこと」といった基本的な注意事項にも言及。「新興国株の“循環性資産”という性質を把握していれば、浮き沈みに動揺することはない」とも述べている。

リスクを最低限に抑えてバランスよく新興投資を楽しみたい投資家向け商品としては、、JPモルガンが提供している1カ国あたりの組み入れ比率が制限されたミックス新興国債“EMBIグローバル・ダイバーシファイド・インデックス”や“GBIグローバル・ダイバーシファイド・インデックス”などが推奨されている。

AVOID派も目的に応じて新興国投資

このように新興国投資がバラエティー豊かになってきたとはいえ、「わざわざリスクを背負ってまでリターンを求める気にはなれない」とかたくなに拒絶反応を起こす「AVOID(回避)派」も健在だ。

過去20年間、ISA(NISAの英国版)を通して先進国株を買い続けている某個人投資家は、「地味に着実に儲けをだす」という自身投資ルールにもとづいて、「新興市場には絶対に手を出さない」と宣言している。

だが、まだ幼い2人の子供のジュニアISAの投資対象としては、日本や欧州の国債に加え中国を選んだという。

その理由として「先の長い子供たちの将来を見越して、多少リスクがともなっても見返りの大きな商品が最適だと思った」と述べている。(アレン・琴子、英国在住の フリーライター)

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