日本銀行 (以下、日銀) によるマイナス金利政策が続く局面において、円預金だけで資産形成を考えるには難しい局面だ。このような環境下において、資産運用に保守的とされる日本人の資産の預け先にも変化が生じている。日銀が公表している「資金循環統計」から日本人の資産がどこにシフトしているのかを読み取っていこう。

低金利政策で定期預金残高が減少

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(写真=PIXTA)

日銀が公表する資金循環統計は、日本における金融機関や法人、家計の各部門の金融資産や負債の推移を預金や株式、保険、貸し出しなどの金融商品ごとに記録したデータだ。蓄積されたデータにより、長期間に及ぶ日本の金融構造の変化や特徴を網羅し、それを通して家計における資金運用の変化を読み取ることができるというわけだ。

実際に、2017年の資金循環統計から、家計における金融資産残高の状況をみてみよう。2017年の家計における同残高は、前年比3.9%増の1,880兆2,865億円。このうち、現金、普通預金や当座預金などの流動性預金、定期預金や定期積立などの定期性預金、外貨預金に着目すると傾向が分かれた。この4つのうち唯一、残高が減ったのは定期性預金で、前年比8兆8,596億円減の448兆103億円となった。

一方、現金は前年比4兆6,211億円増の87兆6,936億円、流動性預金は同27兆5,278億円増の419兆2,394億円。このことから、定期預金が満期を迎えたものの、超低金利時代では、金利収入も期待できないため、定期預金の継続を見送っているケースが考えられる。また、万が一に備えて資産の流動性を確保するため、満期を迎えた定期預金を、普通預金や手元資金として蓄えている姿が浮かぶ。資産運用のノウハウがなければ定期預金での金利収入が望めない状況では、運用資金が行き場を失ってしまったことを意味するのではないだろうか。

利上げに踏み切る他の先進国に注目 金利を求め「外貨」へ資金シフトか ?

しかしリスクを取れる家計では新たな運用先に資金をシフトさせている姿もこの資金循環統計から読み取れる。現金・預金のうち、外貨預金は前年より3,094億円増加し、残高は6兆3,250億円まで伸びている。人生100年時代において「長生き」に備えた長期での資産運用ニーズが高まっており、超低金利下においては円建ての金融商品では利回りが期待しづらい。それであれば、金利の高さや成長率の高さが見込まれる外貨建て資産で長期運用し、資産形成をしていきたいといったニーズがあるのではないだろうか。そういった背景から、利回りの高い外貨預金にも資金が向かっていると考えられる。

日本のマイナス金利をよそに、リーマンショックに端を発した経済危機の震源地だった米国をはじめ、イギリスやカナダなどの先進国は利上げに踏み切っている。米国は、先進国の中ではいち早く金融政策の引き締めに舵を切り、政策金利にあたるフェデラル・ファンド (FF) の金利誘導目標を1.5%-1.75%まで引き上げている。こうした金利上昇のトレンドをつかみ、日本円での金利収入の代わりとして、ドル建てなどの外貨預金の存在感が増しつつあるということだろう。家計資金の海外シフトが今後本格化するかどうかには今後も注目だ。

為替リスクとうまく付き合いながら資産運用を

日本国内の定期預金金利と比較して、相対的に高い外貨預金の金利は投資妙味があると考えられる。しかし資産運用の一手とする前に、為替リスクについても念頭に置いておかなければならない。さもなければ、せっかくの金利収入も、為替市場で円高が進行すると、ドルなど外貨建てで運用した資産を円に換算した場合、元本割れとなるリスクも発生するからだ。こうした為替リスクとうまく向き合うことができれば、日本国内の超低金利時代においても、有効な運用先として外貨預金は検討に値するだろう。(提供:大和ネクスト銀行


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