2020年分 (2021年3月15日期限) の確定申告から青色申告特別控除の条件が一部変わる。青色申告特別控除は個人事業主の重要な節税策の一つだが、具体的に何がどのように変わるのだろうか。
青色申告特別控除とは ?
最初に青色申告特別控除の内容について確認しよう。
●個人事業主を対象とした控除制度
青色申告特別控除とは、領収書や請求書などの証憑書類から会計記帳を行い、正しく申告する人が受けられる所得控除のことだ。
日本の所得税は申告納税制度を採用している。納税者が自分で所得額や税額を計算し、申告する制度だが証憑書類の保管や記帳には手間がかかる。この手間を省かず、正確に申告する人に対する優遇制度の一つが青色申告特別控除だ。控除額には65万円控除と10万円控除の2つがあり、どちらを使うかの条件は所得の内容や記帳の程度に応じて決まる。
●控除を受けるための条件
65万円か10万円の控除には、それぞれ次のような条件が求められる。
【65万円控除の条件】
- 不動産所得か事業所得のある事業主であること
- 複式簿記かつ発生主義で記帳を行っていること
- 期限内に確定申告書・損益計算書・貸借対照表を提出していること
【10万円控除】
- 不動産所得・事業所得・山林所得のある事業主であること
- 現金出納帳や売掛帳などの簡易帳簿での記帳、もしくは現金主義での記帳を行っていること
なお、いずれについても、青色申告承認申請書を提出しなければならない。提出期限は「いつから開業するか」によって異なる。
- 1月1日~15日に開業…提出期限は同年3月15日まで
- 1月16日以降に開業…提出期限は開業日から2ヵ月以内
さらに帳簿や証憑書類は原則7年間保管が必要だ。
2020年分の青色申告特別控除は何が変わる ?
従来の青色申告特別控除は既述したとおりだが、2020年分以降は内容が一部変わる。65万円控除が「65万円控除」「55万円控除」に分かれるのだ。つまり、青色申告特別控除は「65万円控除」「55万円控除」「10万円控除」の3つになる。
●変更点
変わったのは65万円控除の要件に「電子申告 (e-Tax) の有無」が加わった点だ。2020年分の所得税の確定申告をe-Taxで行う場合は65万円控除が受けられるが、紙で申告すると55万円控除となる。つまり、65万円控除を受けるなら複式簿記で記帳するだけでは足らず、e-Taxでの申告が必要なのだ。
なお、e-Taxの申告でなくても電磁的記録の備え付けと保存を行っていれば65万円控除を受けられる。この備え付けと保存自体は電子帳簿保存の機能のある会計ソフトで記帳し、ソフトがインストールされたパソコンをプリンタに接続すれば良いだろう。
ただし電子帳簿保存の適用を受けるためには、事前の申請が必要だ。帳簿の備え付けの開始、つまり会計年の初日の3ヵ月前までに電子帳簿保存に関する申請書を所轄の税務署に提出しなくてはならない。
●変更時期
この変更が実際に始まるのは2020年分の所得税の確定申告だ。つまり2021年3月15日が申告・納税期限となっている確定申告である。e-Taxでの申告はすぐできるものではないため、事前準備が必要だ。
引き続き65万円の控除を受けるには
10万円も控除額が下がるのは個人事業主にとっては痛手だ。これまで通り65万円控除を受けるなら、次のような準備を今からしておきたい。
●電磁的記録の備え付けおよび保存
紙での申告であっても、電磁的記録の備え付けと保存があれば65万円控除が受けられる。ただし前述のとおり、物理的な要件だけでなく事前の申請が必要だ。2021年分の申請は2020年9月30日までとなっている。本記事執筆時点 (2020年11月) ですでに申請期限を過ぎているため、今から対処することはできない。
●e-Taxでの申告
もう一つの方法としてはe-Taxでの確定申告だ。こちらは今からでも対処できる。ただし、事前準備が必要だ。事前準備にはいくつかパターンがあり、ほとんどはオンラインで済む。詳しくは下記の国税庁のリンクを確認してほしい。
【参考】e-Taxご利用の流れ (国税庁) https://www.e-tax.nta.go.jp/start/index.htm
●マイナンバーカードが必要
e-Taxの事前準備の方法のほとんどはマイナンバーカードを要している。また、2016年以降、確定申告には原則マイナンバーの記載とマイナンバーカードの提示または写しの添付が必須だ。マイナンバーカードなしでの確定申告も可能だが、あった方が何かと便利だ。まだ手元にない人は早めに市区町村の役所で手続きすると良いだろう。
青色申告特別控除を活用しよう
個人事業主を対象とした青色申告特別控除は、正確な記帳や証憑書類の保管などが求められる。しかしながら、節税対策としての効果は大きく活用しない手はないだろう。メリットを最大限活かすためにも、事前準備を怠らないことが大切だ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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