EVシフトの動きが加速する中で、国内外でさまざまな取り組みが進んでいる。この流れに取り残されないよう、政府の「2030年ガソリン車禁止」の方針発表やEVシフトの背景、「MaaS」「CASE」など今後の自動車業界を語る上で欠かせない知識について整理しておこう。
EVシフトへの関心が高まっている
世界的に、従来のガソリン車からEV (電気自動車) への転換を図る動きが広がっている。
EVは、バッテリーに充電した電気で走行する自動車のことだ。地球温暖化を加速させる二酸化炭素や、人体に有害な物質を排出しないという特徴がある。環境問題をかんがみても、今後ますますEVが普及していくことは間違いないだろう。
このようなEVシフトの動きと連動するように、EVメーカーのテスラ (米国) やNIO (中国) といった企業への関心が高まっている。
「2030年ガソリン車禁止」の打ち出し
現在、EVシフトはヨーロッパが先行している形だ。菅内閣は、国内の新車販売について2030年代半ばまでに、EVをはじめとしたガソリン車以外に限定するという目標を打ち出した。具体的なガソリン車への規制などは、今後の協議を通じて検討していく。
政府がこのようなEVシフトに向けた方針を明確に打ち出したことで、国内の自動車産業は生き残りをかけた対応に迫られている。
トヨタは未来の社会を見据え、2021年2月、スマートシティ「Woven City (ウーブン・シティ) 」の建設をスタートした。ウーブン・シティでは、さまざまな最新テクノロジーの実証実験を行う予定だ。その中には、自動運転の電気自動車も含まれている。
ガソリン車からEV車へシフト
そもそも、EVシフトの動きはなぜ始まったのか。その背景には、環境問題がある。
ヨーロッパ諸国は、気候変動政策として、再生可能エネルギーの比率を高めること、エネルギー効率化を図ること、温室効果ガス排出量の削減を図ることなどを目標に掲げている。このような取り組みの一環としてEVシフトが進み、EVの販売数は急増している。
アメリカのバイデン大統領もEVシフトを後押しする姿勢だ。実際、国内に公共の充電器を増やす計画を語っている。2021年3月には、EV向け充電ステーションネットワークを運営する企業「チャージポイント」がニューヨーク市場に上場するなど、民間でもEV関連産業の躍進が目立つ。
EVシフトは、自動車メーカーにどのような影響を与えるのだろうか。EVとガソリン車の構造は異なり、ガソリン車でしか使われない部品、EVでしか使われない部品がある。たとえば、EVでしか使われない部品には、モーターや駆動用電池がある。
EVシフトの流れに乗るため、自動車部品メーカーも変革を迫られている状況といえるだろう。
また、EVはガソリン車と比べて構造が単純で、故障が少なく整備しやすいという特徴を持つ。そうなると、使用される部品数が減ったり、整備の機会が減ったりする可能性もある。
EVシフトによって、今後の自動車関連企業の未来は、大きく明暗が分かれるかもしれない。
移動手段だけでない車の意義
車を取り巻く産業の在り方も変わりつつある。これからは、移動手段として車をとらえるだけでなく、より広い意味で車を取り巻く産業の未来を見据えていく必要があるだろう。
特にMaaS (マース) とCASE (ケース) は今後のトレンドになっていくことが考えられる。
MaaS (マース) とは、「Mobility as a Service」の略語で、直訳すると「サービスとしての移動」となる。AI等によって、最適な交通手段を選択できる新たな交通サービスのことだ。政府は、自動運転などの新技術と組み合わせ、社会実装を進めていくことを掲げている。
CASE (ケース) とは、「コネクテッド・自動走行・シェアリング&サービス・電動化」の頭文字をつなげた言葉だ。政府は、CASEに関連する自動車技術の強化に向けて、官民での取り組みを強化していくことを掲げている。
今後の自動車関連業界の企業を語る上で、「MaaS」「CASE」は無視できないキーワードといえる。社会の変革、政府の動向にも着目しつつ、これからの自動車産業の行く末を見守りたい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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