「親から株式を相続したが、知識がなく取り扱いに困った」という経験がある人は少なくないのではないだろうか。売るべきか保有すべきかの判断がつかず、放置している人もいるかもしれない。せっかく親から引き継いだ資産なので、有意義に運用したいものだ。

今回は、面倒な手続きを経てようやく相続した株式をどうするべきか判断する際のポイントについて解説していく。

相続した株の基本情報を押さえよう

親から株式を相続したら売る ? 持つ ? その判断基準を解説
(画像=HCL / stock.adobe.com)

まずは、相続した株式の基本情報を押さえることが重要だ。株式の基本情報には、以下の項目がある。

・銘柄名
「どの会社が発行している株式か」ということだ。あらゆる判断の前提になるので、しっかり把握しておこう。

・保有株数
「何株を保有しているか」ということだ。株式は基本的に100株単位で売買される。ただし、100株に満たない株数でも、一定の手続きを経れば売買が可能だ。詳細は株式を保管している証券会社に問い合わせよう。

・株価
その株式の価格。取得した時の株価を現在の株価が上回っている場合、売却すると利益が発生する。その状態を「含み益がある」という。反対に現在の株価が取得価額を下回っている場合は、売却すると損失が発生する。その状態を「含み損がある」という。

相続した株の場合、相続時点の時価ではなく、親の取得価額を引き継ぐことになる。その時の株価と現在の株価を比較し、現在の株価が上回っていれば「利益がある」状態と言える。相続人は取得費が1円も発生していないとはいえ、相続時に相続税、売却時に利益が出ていればその所得分の税金を払う必要がある。

・評価損益額 (率)
取得価額に対して、どれくらいの含み益、もしくは含み損があるかを示す数値だ。評価損益額の場合はそれらの絶対値を示し、評価損益率の場合はそれらの割合 (パーセント) を示す。

・配当利回り
株価に対する「配当金の割合」を示す指標だ。具体的には、「1株あたり年間配当金 / 株価×100」で算出される。ただ、配当金は業績に応じて支払われるため、期待通りの配当金を受け取れるとは限らない。また、業績が良くても配当金を出さない企業もある。

株を売るべきか保有すべきか ? 判断のポイント

ここからは、株を売るべきか保有すべきかを判断するポイントについて解説する。株価は常に変動するため、今より資産が増える可能性もあれば、減る可能性もある。そのため、「すぐにまとまった資金が必要」「どうしても資産を減らしたくない」という人は売却したり、もっとリスクが低い形で資産を保有したりするとよいだろう。

売るべきか保有すべきかについては、保有している株式の特徴や状態によって判断しよう。ここではいくつか例を挙げて、それぞれのケースにおける判断の仕方を説明する。なお、これらはあくまで一般論であり、個別銘柄の状況によっては異なる判断が必要だ。

また、相続から3年10ヶ月以内に売却することで適用される取得費加算の特例もあるので覚えておきたい。相続税を取得費として加算できるため、利益を小さく抑えることができ節税になる。

例1:保有株式が高配当株やディフェンシブ株

高配当株とは、配当利回りが高い銘柄のことだ。「何%以上が高配当株であるか」についての明確な定義はないが、東証1部の平均配当利回りは約2%なので (2021年11月下旬現在) 、配当利回りが3%以上あれば一般的には高配当株といえるだろう。ディフェンシブ株とは、業績が景気動向に左右されにくい銘柄のことで、生活必需品である食品や医薬品、社会インフラである電力・ガス、鉄道、通信に関連する企業を指す。

このような株式の場合は、引き続き安定した配当が期待できるため、保有を続けるとよいだろう。

例2:塩漬け状態で配当なし

「塩漬け」とは、現在の株価が取得価格から大幅に下がっており、売却すると損失が出るためやむをえず長期保有している状態のことだ。塩漬けになる銘柄には、株価が大きく下落するだけの理由がある。

塩漬け状態であっても、配当利回りが高ければ保有する意義もあるが、配当がないかほとんどないとなると、保有し続ける意義はあまりない。相続した株であれば取得費用がかかっていないため、塩漬け状態でもマイナスにはならないが、親の取得価額を引き継ぐため、計算上は損失が出ている状態となる。今後も株価上昇の見込みがなさそう、損益をいつまでも気にすることが億劫、などであれば思い切って売却するのも良いだろう。また、譲渡損は確定申告することで節税できる場合がある。

例3:グロース株で株価が上昇基調

グロース株とは売上や利益などの成長率が高く、成長 (グロース:growth) している銘柄のことだ。業績が年々良くなっていれば、株価も上昇しているだろうし、親の取得価額と比較し、利益が出ている状態かもしれない。

投資家心理としては、売却して利益を確定したくなるものだが、そのような銘柄こそ保有を続けたい。未来のことは分からないものの、引き続き業績が拡大して株価も上がっていくことが期待できる。売却を検討するのは、業績が横ばいになったり、成長が鈍化したりしたときでも遅くはない。ただし、親の取得価額から利益が出ていれば、その所得に応じてさらに課税される (3年10ヶ月以内なら取得費加算の特例が適応できる) 点は売却タイミングの検討材料として意識しておきたい。

自分の考えをしっかり持って判断しよう

ここまで、相続で取得した株式をどうすべきか判断のポイントについて解説してきた。個々人の状況によりケースバイケースとなるが、いずれにせよ自分の考えをしっかり持って行動することが重要だ。相続した株式の状態をよく見極めた上で、売るべきか保有すべきかを判断してほしい。

(提供:大和ネクスト銀行


【関連記事 大和ネクスト銀行】
大切なのは「お金より時間」? お金の管理を「時間」に応用しよう
個人投資家の強みを活かす ! 機関投資家が参入しづらい銘柄の特徴
知っているとお得な「株主優待知識」をおさらい ! 全4選
落語で学ぶ「お金にまつわる」3つの教訓
富裕層が米ドルを選ぶ理由「殖やす」以上に大切なコト