日本における「タンス預金」の総額が、年々増加していることをご存じだろうか。この事実は日本銀行 (日銀) が毎年行っている統計で明らかにされており、2021年3月に公表されたデータでは初めて100兆円を超えたことが判明した。この記事では、タンス預金の良し悪しを考察する。

日銀の統計が示す、我が国の「タンス預金」の現状

「タンス預金」は危険 !? 知っておきたい注意点とは ?
(画像=Rummy & Rummy / stock.adobe.com)

日銀が毎年発表している「資金循環統計」では、金融機関や一般企業、政府、家計などが保有している資産や負債の金額が明らかにされている。このうち「家計」の資産や負債のデータから、日本全体でタンス預金がいくらぐらいあるかを分析することができる。

以下は、2022年3月に発表された最新の資金循環統計のデータから、家計における資産についての数字を抽出したものだ。「現金・預金」の金額のうち「現金」が、自宅などで保管されているタンス預金の金額を示している。

▼「家計」における資産の分析

項目金額
現金・預金1,091兆6,991億円
└ 現金107兆2,394億円
└ 流動性預金585兆2,506億円
└ 定期性預金392兆1,217億円
└ 譲渡性預金264億円
└ 外貨預金7兆610億円
※出典:日本銀行「資金循環統計」2021年12月末 (速報)

上記のデータから、「うち現金」つまりタンス預金の金額は107兆2,394億円に上ることが分かる。この1年前のデータではタンス預金の金額は約101兆円であり、この1年で金額がさらに増えている。

ちなみに、かつては現金をタンスに保管している人が多かったことから「タンス預金」という言葉が使われるようになったが、実際には、もちろんタンスではなく金庫に保管されているケースも多い。

ちなみに、普通預金などの「流動性預金」の金額は585兆2,506億円、定期預金などの「定期性預金」の金額は392兆1,217億円、ドルなどで貯蓄をする「外貨預金」の金額は7兆610億円となっている。

タンス預金にはメリットはある ?

このように、タンス預金の金額は日本全体で100兆円を超えるまでに膨らんでいるわけだが、そもそもタンス預金自体にメリットはあるのだろうか。

・銀行の破綻から資産を守れる

銀行にお金を1,000万円以上預けていて、万が一その銀行が経営破綻してしまった場合、1,000万円を超える部分については基本的には保証されない。「ペイオフ」という制度で払い戻しが保証されている金額は、元本1,000万円までと、その利息までだからだ。

そのためタンス預金をしていると、銀行の破綻リスクから逃れられる。

・現金が必要なときにすぐ使える

銀行に預金していると、現金が必要なときに都度、銀行の窓口やATMに出向かなければならない。当然ではあるが、タンス預金をしておけばこうした手間や時間がかからない。

タンス預金のデメリット・注意点は ?

一方、タンス預金にはデメリットや注意点もある。

・空き巣にお金を盗まれるリスク

自宅で現金を保管していると、空き巣が入られたときにその現金を盗まれる可能性がある。数千円、数万円ならまだしても、数百万円、数千万円単位の現金を置いていた場合、自らの資産にかなりの損失が出てしまうことになる。

その点、銀行に預けていれば空き巣などを心配する必要はない。自宅で火災が起きた場合でも、銀行にあらかじめ預金をしておけば、少なくとも現金の焼失を免れる。

・相続税対策にはならない

タンス預金で現金を持っておき、息子や娘にお金を相続する際に課税を免れようという人は少なからずいる。しかしそれは脱税行為であり、そもそも発覚リスクも高い。

銀行に現金を預けていなくても、税務署は過去の収入状況などから個々人のおおまかな資産額を把握しており、相続税を過少申告すると税務調査などの対象となる可能性が高い。税務調査で脱税行為が発覚すると、追徴課税などの対象となる場合もある。

「資産運用のチャンス」を逃しているかもしれない

さらにもう1つ、タンス預金におけるデメリットを挙げよう。それは、資産を増やすチャンスをみすみすふいにする、という点だ。

資産運用では、保有している現金を使って投資や預金を行うことで、売却益や配当、利子などの利益を狙える。もちろん投資では資産が目減りするリスクもあるが、投資商品の性質を知り、分散投資などでうまくリスクを軽減すれば、資産を増やすことができる。

資産運用の手法はさまざまで、株式投資や投資信託、不動産投資、外貨預金などがある。このうち外貨預金は、円で銀行に預けておくよりも高い金利が期待できるほか、円安になった場合には為替差益でも利益を出すことができる。

資産運用は複数の方法ですると、その分、リスクも分散される。株式投資や不動産投資などとともに、外貨預金を始めてみるというのもいいだろう。

外貨預金などで資産を増やす方法を検討しよう

タンス預金にもメリットはないわけではないが、日本人の平均寿命が伸びていることを考えると、定年が見えてきた時期においても、資産を増やす方法を積極的に検討したいところだ。

いま、もし自宅のタンスもしくは金庫に眠っている現金があるのなら、外貨預金などの資産運用にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

(提供:大和ネクスト銀行


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