持ち家や継ぐ実家などがない場合、高齢になってからの住まいは悩ましい問題だ。足腰に自信もなくなってくるし、定年退職や引退などとなれば収入も減少する。高齢者は一般の賃貸住宅を借りづらいという話もある。しかし、まさに高齢者のための、「高齢者向け優良賃貸住宅」というものがあるのだ。一体、どんな住宅で、どのように契約することができるのだろうか。
「高齢者向け優良賃貸住宅」とは ?
高齢者向け優良賃貸住宅は、略して「高優賃」とも呼ばれる。「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づいて、都道府県単位で認定された住宅だ。高齢者が安全に、そして安心して暮らせるように、一定の整備基準に従ってバリアフリーのつくりとなっており、住居内には緊急通報装置が設置されている。ただし、公営住宅ではなく、運営や管理を行うのはUR都市機構や民間業者だ。
入居者には年齢制限などがある。細かい点は施設によって異なるが、60歳以上の単身世帯や、60歳以上の人とその配偶者、などとなっていることが多い。そして、一定の所得以下の世帯に対しては、家賃減額補助が国や地方自治体から用意されている。
ただ、高齢者向けとは言っても、施設では介護サービスは基本的に提供していないため、高齢者向け優良賃貸住宅は自立している、または軽度の要介護状態の人向けの住宅と言える。
どのように探して、申し込めばいい ?
一般の賃貸住宅を探すのと同様に、不動産会社の店舗で情報を得ることができる。ただ、高齢者向け優良賃貸住宅に的を絞って物件を探すなら、UR都市機構が扱っているものならUR都市機構に、地方自治体が補助金を出しているものならその地域の住宅供給公社に問い合わせる方が近道かもしれない。最近はネットでも十分な情報を得ることができるので、実地見学の前に、まずはネットで大まかに希望対象を絞り込んでおくのもよいだろう。
ただし、急激に増加している高齢者にとって高齢者向け優良賃貸住宅は魅力的なために、需要に対して供給は少ないのが実情だ。また、「高齢者向け」と謳っているものでも、「高齢者向け優良賃貸住宅」ではない一般の賃貸住宅の場合もあるので、気をつけたい。
興味のある物件が見つかったら、店舗であれば担当者に、ネットであれば指示に従って、申し込みを行う。その後、施設の運営会社による入居審査が行われ、審査に合格すれば契約となる。
実際に支払う家賃はいくらぐらい ?
高齢者向け優良賃貸住宅では礼金や仲介手数料はかからない。ただし、敷金は必要となることが多く、物件によるものの、家賃2ヶ月分としているところが多いようだ。
本稿の執筆時点では、関東と関西でそれぞれの例として、 (1) 東京都調布市と、 (2) 奈良県奈良市の物件の入居者募集条件を以下の通り確認することができた。
(1) 東京都調布市
家賃 (共益費) | 76,400円 (3,070円) |
礼金・仲介手数料・更新料・保証人 | 不要 |
敷金 | 2ヶ月 |
間取り / 床面積 | 2DK / 39㎡ |
最寄り駅までの所要時間 | 徒歩7~19分 |
(2) 奈良県奈良市
家賃 (共益費) | 56,400円 (3,200円) |
礼金・仲介手数料・更新料・保証人 | 不要 |
敷金 | 2ヶ月 |
間取り / 床面積 | 3DK / 54㎡ |
最寄り駅までの所要時間 | 徒歩9~15分 |
家賃は当然、立地や築年数によってかなり変わってくる。しかし非常にざっくり言うと、家賃は月々5万円から10万円、初期費用は敷金としてその2倍程度が目安であると考えておけばよいかもしれない。
家賃については、所得に応じて最大40%の家賃補助が出る。しかし、これも施設によって詳細は異なる。また、入居条件として「月額の世帯所得が48万7,000円以下であること」、といった所得上限を設けている場合もある。入居条件の詳細は施設に問い合わせておくことが重要だ。
高齢者向け優良賃貸住宅のメリット・デメリット
高齢者向け優良賃貸住宅のメリットとしては、まず高齢者が契約しやすい物件であることが挙げられる。高齢者のために用意された住宅であり、年齢によって入居審査に影響が出ることはないだろう。また、設計が高齢者に優しい造りとなっていることもメリットだ。緊急通報装置といった、いざという時の見守りサービスは、一人暮らしの高齢者にもとても安心だろう。そして何より、家賃の減額補助があることが大きい。収入に不安のある高齢者世帯には、ぜひ検討してほしい住宅である。
一方、デメリットとしては、高齢者向け優良賃貸住宅は、基本的に自立している高齢者向けの住宅であるということだ。言い換えれば、重度の介護が必要になった場合に住み続けることは難しい。また、公的施設である特別養護老人ホームなどと比べると、やはり住宅費は若干割高となる。
高齢者向け優良賃貸住宅は、有力な一つの選択肢
一口に高齢者と言っても、どこに、どのように住むのかは、自身の健康状態や経済状況によって最適な答えは変わってくる。しかし、自立ができている場合には、高齢者向け優良賃貸住宅はひとつの有力な選択肢となりうる。住居にかける支出を抑えながらも、安全と安心を重視して作られた、高齢者のための賃貸住宅だからだ。
(提供:大和ネクスト銀行)
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