日本の金融政策は、日本銀行が担っている。しかし、お金にまつわる組織には財務省や金融庁もあるため、混同してしまいがちだ。

為替相場にも大きく影響する金融政策を理解するためにも、それぞれの組織の役割について確認しておこう。

為替に影響を与える金融政策

日本の金融政策は誰が決める ? 日銀 ? 財務省 ? 金融庁 ?
(画像=polack / stock.adobe.com)

日本における金融政策とは、物価や通貨を安定させるために日銀が決定し、実行する経済政策のことだ。代表例として、金融市場を通じて通貨の流通量を増やしたり減らしたりして、市中の金利を調整することが挙げられる。

一般的に、景気が過熱気味で物価が高騰する局面では、金利を上げて (=利上げ) 景気を冷まそうとする。反対に、景気が悪化する局面では金利を下げて (=利下げ) 、景気を上向かせようとする。

買いオペレーションは利下げから円安へ

通貨の流通量を増やすための施策は「買いオペレーション」と呼ばれる。日銀が債券や手形を買い取ることで、通貨が市場に供給される。市場に多くの通貨が出回れば、需要と供給のバランスから金利は下がることになる。

これによって日本の金利が低くなり、米ドルの金利が相対的に高くなるケースを考えてみよう。投資家は、より有利な金利を求めて円の資産を減らし、ドルの資産を増やそうとするだろう。すなわち円が売られ、ドルが買われる動きが出る。それが、円安・ドル高につながる。

売りオペレーションは利上げから円高へ

一方の「売りオペレーション」は通貨の流通量を減らすための施策で、日銀が保有する債券や手形を売り、市場から通貨を吸収することだ。市場に出回る通貨が減れば、金利が上がることになる。

日本の金利が高くなり、米ドルの金利が低くなるケースでは、投資家はより有利な円の資産を増やし、ドルの資産を減らそうとするはずだ。すると円が買われてドルが売られるため、円高・ドル安になる

混同されがちな日銀・財務省・金融庁

続いて、日銀・財務省・金融庁を組織的に説明しよう。

組織的にはどのように異なる ?

日銀は日本の中央銀行だが、政府の組織ではない。上述した金融政策も政府から独立して判断する。

金融政策の基本方針を決めるのは、年に8回開催される「金融政策決定会合」と呼ばれる会合で、日銀総裁、2人の日銀副総裁、6人の審議委員からなる。もちろん、政府の経済政策との整合性は必要で、十分な意思疎通が欠かせないが、金融政策の独立性は日銀法によって定められているのだ。

これに対して、財務省と金融庁は国の行政機関だ。「省」は内閣直轄の機関で、大臣は内閣を構成する。「庁」は内閣直轄ではなく、いずれかの省や内閣府の外局にあたる組織だ。

それでは、金融庁はどの府省の外局組織なのだろうか。答えは内閣府で、財務省ではない。その理由は、金融庁の成り立ちにある。

財務省と金融庁は旧大蔵省が切り離されてできた

金融庁が担う大きな仕事に民間金融機関の検査・監督があるが、これはかつて大蔵省の仕事だった。しかし、大蔵省で主に検査を担当する官僚と金融機関がかかわる接待汚職事件が起き、検査部門を大蔵省から切り離すことになった。

それに中央省庁再編の動きも重なり、金融監督庁 (金融庁の前身) が誕生し、総理府 (いまの内閣府) の下に置かれた。

日銀の役割は ?

日銀は、政府から独立して金融政策を決定・実行する。最大の目的は、物価を安定させることを通じて、国民経済を健全に発展させることである。物価が大きく変動すれば、安心してお金を使うことができず、経済活動が困難になってしまうからだ。そんな日銀の3つの役割を見ていこう。

発券銀行

日本で唯一、銀行券を発行する権限を持つ。そして、国民が安心して使えるように、全国にお金を行きわたらせている。硬貨は政府 (財務省) が発行しているが、日銀の窓口を通して流通させている。

銀行の銀行

民間の金融機関は、日銀に預金口座を開設している。金融機関はお互いにこの口座を通じて資金の貸し借りを行ったり、日銀との間で国債の売買などを行ったりしている。

政府の銀行

政府も日銀に口座を持っており、国税などで受け入れた資金を管理している。財務大臣に権限がある為替介入なども、政府から委託されて実行する。

財務省の役割は ?

日銀が担っているのは金融政策だ。これに対して政府・財務省が担うのは、財政面からの経済政策=財政政策だ。歳入や歳出を通じて、景気の拡大や抑制を図っている。

国家予算の編成

国家予算を編成する権限は、財務省が握っている。公共事業を拡大 (または縮小) することで景気の拡大 (または抑制) を狙う。国債の発行には財源確保だけでなく、市場に資金を供給するという役割もある。

税制の企画

税金は国の歳入の大きな柱だが、増税や減税は景気の拡大や抑制につながる。国税庁は、財務省の外局組織にあたる。

金融庁の役割は ?

日銀=金融政策、財務省=財政政策だったが、金融庁は資金が適切に供給されていくことで国民経済の向上を図る。また、預金者や投資家を保護する目的もある。

金融機関の検査・監督

銀行や保険会社などの金融機関が、法律やルールに基づいて健全に運営されているかをチェックする。守られていない場合は処罰したり、業務改善命令を出したりする権限も与えられている。また、株式の取引も監視している。

金融制度のルールづくり

金融活動をめぐる法律やルールづくりを主導している。金融庁が主にかかわる法律には、銀行法、保険業法、金融商品取引法などがある。

日銀・財務省・金融庁の違いを頭に入れておこう

この記事で解説した金融政策や財政政策について聞いたことはあっても、「具体的な内容については知らなかった」という人も多いだろう。日銀、財務省、金融庁の立場や役割についても、曖昧だったかもしれない。

資産運用をしていくにあたって金融ニュースを読み解くために、これらの知識はしっかりと頭に入れておいたほうがよいだろう。

(提供:大和ネクスト銀行


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