自分が年を重ねてくると親も高齢になり、次第に認知症になるリスクや亡くなるリスクが高まることはやむをえないことだ。しかし、そういった事態に陥ったとき「親の生命保険の加入状況が分からずに困る」と感じている人もいるのではないだろうか。
本記事では、親の生命保険の加入状況が分からなくて困るシーンとともに、生命保険契約照会制度について紹介する。
親の生命保険加入状況が分からなくて困るシーン
家族の病気や不幸は考えたくない人が多いだろうが、次のようなことが起こり親の生命保険加入状況を把握していない場合、困ることになるだろう。
親が認知症になったとき
厚生労働省の研究班の推計によると、65歳以上の高齢者のうち2022年における認知症の患者数は、約443万人で有病率は約12.3%だ。これは、決して低くない割合であり、自分の親が認知症になる可能性も十分にあるといえる。ちなみに、軽度認知障害 (MCI) の患者数は約558万人で有病率は約15.5%だ。
認知症になってからでは、生命保険の加入状況や保険証書のことを聞いても正確な情報が得られない可能性があるため、十分に注意したい。
親が亡くなったあと
生命保険の加入状況を知らないまま親が亡くなった場合も、情報を探すのに苦労するだろう。エンディングノートや保険証書がきちんと整理されていればいいが、そうではないケースも多い。
災害時に家族が行方不明になる
自然災害は、突然起きる。特に津波被害や土砂崩れなどによって家族が行方不明になってしまうと、家族が亡くなったときと同様に情報を得られなくなってしまう。
「生命保険契約照会制度」とは ?
こうした状況に陥ってしまった場合は「生命保険契約照会制度」を活用したい。これは、家族の生命保険の契約状況を一括で照会できる制度だ。以降では、概要や利用手順、利用料などについて詳しく解説する。
概要
生命保険契約照会制度は「平時利用」だと、家族が亡くなった場合や医師による診断で認知判断能力が低下したと認められた場合に利用が可能だ。その家族が契約保険者もしくは被保険者 (※保険の補償を受ける人 / 保険の対象になる人) となっている生命保険を契約しているかについて、まとめて確認してもらえる。
「災害時利用」は、災害救助法が適用された地域で家族が行方不明となった場合、利用可能だ。生命保険契約照会制度を利用すると、一般社団法人「生命保険協会」が同協会の会員である生命保険会社にまとめて照会が行える。そのため、家族が保険会社1社1社に確認を行う手間と時間を大幅に削減することが可能だ。
ちなみに、2024年4月1日時点では同協会の加盟会社は41社となっている。
利用手順
続いて、生命保険契約照会制度を利用する流れを解説する。この制度を利用する人を「照会者」、調査対象の家族を「照会対象者」、手続きを実際に行う人を「照会代表者」と呼ぶ。このことを踏まえ、以下の説明を読んでほしい。
- ステップ1:家族の中で照会代表者を1人決めて、生命保険協会に申し込みを行う
- ステップ2:生命保険協会が各生命保険会社に照会した結果を照会代表者に回答する
- ステップ3:該当する保険があった場合、照会代表者もしくは照会者が生命保険会社のコールセンターに連絡し、契約内容の照会や請求の手続きを行う
生命保険協会が各生命保険会社に照会を行ったあとは、文書でその結果が通知される。具体的には、各生命保険会社の欄に「◯印」と「×印」で契約の有無が示されるイメージだ。なお、生命保険協会はこの制度を利用する前に以下のことをするようお願いしている。
- 自ら生命保険証書を探すこと
- 生命保険会社から送付されてきた通知物を探すこと
- 保険料の口座振替履歴を探すこと
利用料は ?
生命保険契約照会制度の利用料は、平時利用の場合、照会対象者1人につき3,000円、災害時利用の場合は無料だ。ただし、利用にあたっては公的書類 (戸籍抄本など) や医師の診断書なども必要になり、これらの取得費用は別途かかる。
この制度に関して、詳しくは以下のページも参考にしてほしい。
▼生命保険契約照会制度のご案内|生命保険協会
https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/
早めに情報を共有しておくことが重要
万が一の際は、生命保険契約照会制度の利用ができるものの、普段から家族内で情報共有をしておけば利用せずに済む。
また、亡くなったり行方不明になったりすることは必ずしも親とは限らず、自分に起きることもあり得る。そのため、親の情報だけではなく自分の情報を家族と共有しておくことも重要だ。
保険だけではなくサブスクなどの契約状況共有も
家族で共有しておきたい情報は、生命保険関連だけではない。普段から利用しているサブスクリプションサービスの契約状況なども含めて共有しておけば、もしもの際に困ることが少なくなることも覚えておきたい。
特にインターネットを通じて利用するサブスクサービスの場合は、請求書などが郵送ではなくメールで送付されてきたり、ウェブページでしか利用実績を確認できなかったりするケースも多い。遺された家族の手間を省くためにも、こうしたサービスの契約状況なども共有リストに入れておくようにしよう。
(提供:大和ネクスト銀行)
【関連記事 大和ネクスト銀行】
・大切なのは「お金より時間」? お金の管理を「時間」に応用しよう
・個人投資家の強みを活かす ! 機関投資家が参入しづらい銘柄の特徴
・知っているとお得な「株主優待知識」をおさらい ! 全4選
・落語で学ぶ「お金にまつわる」3つの教訓
・富裕層が米ドルを選ぶ理由「殖やす」以上に大切なコト