証券会社の歴史と変せん

証券会社の歴史をたどるうえで欠かせないのが、証券取引所の歴史です。以前は東京証券取引所、大阪証券取引所、名古屋証券取引所が日本の3大証券取引所と言われていました。

1878年に東京株式取引所(東京証券取引所の前身)が設立されました。その他にも大阪、名古屋など各地に続々と証券取引所が設立されました。そしてそれぞれの証券取引所周辺に、注文を取り次ぐための多くの証券会社が誕生したのです。

特に日本の3大証券取引所といわれた東京・大阪・名古屋は、証券取引所周辺の証券会社も数多くありました。東京は兜町、大阪は北浜、名古屋は伊勢町と、証券取引所と証券会社が密集する一帯の地名や通りの名前が証券街の代名詞となりました。現在でも兜町というと、証券業界隈のことを指すぐらい有名となっています。

証券取引所の歴史と共に歩んできた証券会社ですが、現在存在する最古の証券会社はあかつき証券(旧黒川木徳証券)<8737>であると言われています。1878年から証券業を営んでいます。

証券会社の売買注文の取り次ぎも時代によって変わってきました。1878年より株式売買が始まっており、当然のことながら当時はコンピューターでの取引はありませんでした。そのため、証券会社は株式の売買注文を発注するために、取引所に社員を配置して売買の取り次ぎを行っていました。

当時の証券会社の様子で有名なのが「手サイン」です。いち早く投資家の注文を発注するために、証券会社の社員は手サインによって売買する銘柄や、株数、値段などを伝え合っていました。しかし、東証では1999年にコンピューターによる取引に完全移行し、証券会社にも新しい時代の波がやってきました。ネット証券の台頭です。

現在の証券業界はどうなっている?

ネット証券が誕生する以前は、証券会社といえば対面証券のことでした。対面証券とは、証券会社の営業担当者と相談しながら株式の売買注文を出す営業スタイルです。そのため、対面証券は文字通り「対面」でアドバイスなどをもらうことができますが、株式の委託手数料は高めに設定してあることが一般的です。

しかし、株式売買のコンピューター化や手数料の自由化によって台頭したネット証券は、瞬く間に投資家の間に浸透しました。ネット証券は対面証券とは異なり、投資家に営業員などはつきません。そのため、投資家はインターネットを通して自ら売買注文を出します。営業員がつかず自分で注文を発注する代わりに、手数料は対面証券に比べて割安に設定されていることが一般的です。

現在の証券会社は対面証券、ネット証券それぞれの特徴を生かして営業活動を行っています。

現在、大手証券会社と言われているのが野村證券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などの証券会社です。準大手証券と言われているのが岡三証券、東海東京証券、SMBCフレンド証券などの証券会社で、その他にも中堅証券や地域営業に特化した地場証券などがあります。これらの証券会社は対面証券として主に営業をしています。一方でネット証券にはSBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券等証券会社が存在しています。

しかし、現在では対面証券とネット証券の壁がなくなりつつあります。多くの対面証券が、インターネット上で安い委託手数料で株式を売買できるようになっていますし、ネット専用の取引コースを設けている会社もあります。またネット証券の中でも、大手ネット証券のSBI証券などが対面取引を開始しています。

証券会社は時代とともに進化を遂げています。今後利用される際に、今回紹介した歴史や仕組みを意識してみると、投資家として視野が広がるのではないでしょうか。(提供: お金のキャンパス

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