株式投資では、投資先の国が抱える懸念を把握することが重要だ。その懸念によって株価が揺さぶられることが少なくないからだ。最近の中国経済においては、4つの懸念があるとされる。中国恒大の問題や電力不足の問題などだ。それぞれ解説していこう。

目次

  1. 懸念①:不動産市場を揺るがす「中国恒大」問題
  2. 懸念②:石炭不足などに端を発する電力不足問題
  3. 懸念③:新型コロナの再拡大による消費の落ち込み
  4. 懸念④:工業用金属や建材などの原材料費の高騰
  5. 「時間の分散」を意識したい
  6. 中国経済のポジティブな側面にも注目を

懸念①:不動産市場を揺るがす「中国恒大」問題

現在の中国企業への株式投資で最も懸念すべき点の一つは、「中国恒大」の問題だろう。中国恒大は中国の不動産開発大手で、債務危機に陥っている。中国恒大がデフォルト(債務不履行)となってしまえば、リーマン・ショックのような世界的な経済危機につながる可能性もゼロではないと言われている。

その理由は、負債が破格の規模となっていることだ。2021年6月末時点で同社の負債総額は1兆9,665億元(約33.6兆円)であることが明らかにされている。

しかし今年に入るまでは、中国恒大の負債が積み重なっているにもかかわらず、同社に対するデフォルトの懸念はなかった。負債が積み重なってはいたが、滞りなく融資を受けることができていたからだ。だが中国政府が不動産企業に対する融資の引き締めを進めたため、資金繰りが一気に厳しさを増してしまった。

恒大問題を受け、中国政府はこれまでの不動産企業への引き締め等をやや緩和するなどの対策を取っており、中国恒大のデフォルトが不動産市場の先行きの懸念を高めることにつながるとは考えづらいものの、中国恒大のデフォルトをきっかけに、不動産企業の株価が軒並み下落し、中国全体の株式市場にも影響を与えてしまう可能性がある。

懸念②:石炭不足などに端を発する電力不足問題

今の中国にとってはエネルギー危機も見過ごせない問題の一つだ。石炭不足・石炭価格の高騰などによって電力供給が不足しており、生産の中断・停止に追い込まれる企業が相次いでいる。

なぜ中国で石炭不足が起きているのか。その理由の一つが、中国政府が進めている「エネルギーシフト」の政策にある。中国政府は二酸化炭素(CO2)を排出する石炭の生産を抑制するよう動いてきた。

また、石炭の輸入を抑制していることも電力不足を助長した。中国政府は豪州からの石炭の輸入を禁止した。豪州政府が中国に対し、新型コロナウイルスの発生起源について調査するよう要求し、中国側がこれに反発したことがきっかけだ。

それに加え、新型コロナウイルスの感染拡大が収束ムードにある中、人々の消費活動が盛んになり、企業の生産活動が一気に活発化したことも大きい。電力供給面において、消費活動や生産活動の急回復に対する準備が整っていなかったわけだ。

懸念③:新型コロナの再拡大による消費の落ち込み

前述の通り、中国では新型コロナウイルスの収束ムードが広がった。そのことが電力不足の引き金になったが、その後、新型コロナウイルスの感染再拡大が起き、個人消費の落ち込みにつながっている。

すでにご存じの通り、新型コロナウイルスの感染拡大が起きると、外出自粛やイベントの開催自粛、リモートワークなどによって、その国の消費が落ち込む。特に中国はゼロコロナ政策を取っており、中国経済の専門家からは、今後の中国経済の成長鈍化を指摘する声が聞かれるようになった。

懸念④:工業用金属や建材などの原材料費の高騰

中国に限った話ではないが、原材料費の高騰も中国経済が抱える懸念の一つと言える。特に工業用金属や電子部品、建材、セメントなどの価格が高騰している。

原材料費が高騰すると、企業の利益を圧迫する。利益が圧迫されるのを回避するためには生産した製品などの値上げをせざるを得なくなるが、製品の値上げは顧客離れにつながり、企業の業績に悪影響を及ぼしかねない。

すでに中国国内では工業製品や家具などの値上がりが目立つようになってきている。原材料費の影響が中国企業の業績にどのようなインパクトを与えているのか、今後、各企業が発表する決算の内容に注目したいところだ。

「時間の分散」を意識したい

こうした懸念の動向をしっかりとウオッチしていると、懸念が解消されるタイミングもつかみやすい。懸念が解消されたあとは株式の買いが先行することが予想されるため、株式投資の良いタイミングになるだろう。

ただし、これらの複数の懸念が一気に解消されるわけではない。そのため、投資タイミングをずらす「時間の分散」も意識するようにしたい。投資タイミングをずらすことで、株式の極端な「高値づかみ」を回避することができる。

中国経済のポジティブな側面にも注目を

この記事では中国が抱える懸念について論じてきたが、中国への投資においては、こうしたネガティブな側面だけではなく、ポジティブな側面にも注目するようにしたい。

例えば中国では、先進技術を開発する企業の中から続々と「ユニコーン企業」(評価額が10億ドル以上、設立10年以内の非上場企業)が生まれている。日本のユニコーン企業が10社に満たない中、中国のユニコーン企業の数はすでに100社を優に超えている。

こうした企業の上場ラッシュが起きれば、中国経済は活気づき、株式市場はリスクオン、つまり強気相場が始まると考えられる。中国経済が抱える懸念も、そしてポジティブな側面も、両方をウオッチし続けることが重要だ。

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