派遣社員のキャリアの悩みは深そうだ。比較的、不安定な環境で勤務しているという理由だけでなく、将来のビジョンを構想したり、実現に向けた一歩を踏み出すことが難しいという一面があるのかもしれない。

派遣会社の教育支援の現状に「不満」が6割

公的にも支援する姿勢が示されているものの、派遣社員もキャリアアップに向けて積極的に行動できるような、実効的なものにはしきれていない実状もありそうだ。

一部の調査でもそうした実態が明らかにされている。デジタル・ナレッジとN-Academyが実施した派遣社員の教育訓練体制についての調査によれば、82%がキャリアアップについての、悩みを抱えているという。

具体的には、「キャリアビジョンが不明確」「思い描くキャリアビジョンはあるがそれに向けてどう動けばよいかわからない」といった悩みがあり、派遣社員として理想のキャリアに踏み出しにくいのが現状だ。

両社の調査ではほかにも、派遣会社の教育訓練制度についても尋ねたところ、回答者の6割が不満を抱えていることが明らかになった。その中で、「受けたい講座がない」「学ぶ時間・環境がない」「段階的・体系的な教育体制がない」といった回答が派遣社員から寄せられており、キャリアアップの支援体制の拡充が課題の一つだといえそうだ。

派遣会社にはキャリア支援の「義務」

ただ、公的な派遣社員へのキャリア支援の体制整備がまったくないわけではない。現在では、派遣法により、就業に必要な知識や技能の習得の支援などが義務付けられており、2015年から制度も開始しているからだ。

現状では、派遣会社は「段階的・体系的な教育研修の実施」「キャリアカウンセリングの実施」を粉わなければならず、その業務にも派遣社員への教育訓練や職業生活の設計への相談などが加わっている。

さらに、派遣先・派遣社員の受け入れ先の企業も、現状では、キャリア支援の義務を負う。具体的には派遣元の要求に応じて、派遣社員のキャリアアップの支援のために、職務の遂行状況や、能力の向上を知らせなければならない制度になっている。

派遣元や派遣先のキャリアアップ支援が義務化されているものの、デジタル・ナレッジとN-Academyの調査結果からすれば、派遣社員の悩みを解決するまでにはまだまだ及んでおらず、派遣社員のキャリアアップ支援のさらなる後押しが求められている様子だ。(ZUU online 編集部)

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