カブドットコム証券・齋藤正勝代表執行役社長
カブドットコム証券・齋藤正勝代表執行役社長(写真=FinTech online編集部)

「フィンテック」が社会を変えると言われる一方で、多くの金融機関が自社にも生かそうと関連部署の立ち上げを進めている。カブドットコム証券 <8703> もその一つで、同社は今年1月に、先端研究・事業開発を行うチーム「kabu.com Fintech-Lab」を社内に設置。さらに、このほど「kabu.com Fintech-Labカンファレンス」を3月18日に開催し、「kabu.com API」を中心とした、新サービス開発の取り組み状況を明らかにした。

「ウェブAPI」が開く金融システム連携の扉

カンファレンスでは、「kabu.com API」を通じたオープンイノベーションの推進や、フィンテック領域で協業を検討している企業が参加し、事例の紹介や交流を図った。

ちなみにAPIとは、特定の企業や組織のシステム機能や管理するデータを、企業組織の外部から呼び出して、使う方法の一つ。情報システム管理者らは「APIを叩く」などとその実行処理を表現しており、まさに外部から「扉を叩いて」機能やデータを使える仕組みとなっている。

「API」にもさまざまなものがあるが、「ウェブAPI」が話題の中心。今後、ウェブサービス同士の連携によりどのようなサービスが登場し、新たな価値が創出されるのか期待されている。

例えば、決済プラットフォーム「スクウェア(Square)」と、クラウド受注・発注システム
「コレック(COREC)」やクラウド会計システム「フリー(freee)」との連携なども、いわゆる「API」を活用している。ほかにも、フリーのクラウド会計に登録したデータを人工知能で分析し、経営を支援するツールも出てきており、フィンテックAPIの生態系も広がりつつある。

じぶん銀行役員補佐兼商品開発部長の榊原一弥氏(左)、三菱東京UFJ銀行デジタルイノベーション推進室の藤井達人氏(写真=ZUU online 編集部)
じぶん銀行役員補佐兼商品開発部長の榊原一弥氏(左)と三菱東京UFJ銀行デジタルイノベーション推進室の藤井達人氏(写真=FinTech online編集部)

カンファレンスでは、フィンテックを取り巻く環境についてのパネルディスカッションも実施。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG) <8306> の三菱東京UFJ銀行デジタルイノベーション推進室の藤井達人氏と、じぶん銀行役員補佐兼商品開発部長を務める榊原一弥氏が、API開放の社会的な影響について、それぞれの意見を披露してみせた。

API連携が「銀行口座の活性化」を後押しする可能性も

三菱東京UFJ銀行の藤井氏は「フィンテックと金融機関は敵対するものではない」とした上で、APIについて「決済のAPIはすでにたくさんあり、銀行もAPIのエコノミーに入っていったほうがいいのではないかという議論がある」「(銀行とは関係のない)顧客がほかの行動から銀行APIにつながる行動を起こし、銀行口座も活性化されるといった可能性がある」などと解説。

また、じぶん銀行の榊原氏はさらに、APIはすでにシステムの中に組み込まれており、開放するかどうかの問題だと言及。続けて、同氏は「既存の技術も組み合わせて、最高のカスタマーエクスペリエンスを実現することが大切」などと話した。

パネル討論に先立って、カブドットコム証券で代表執行役社長を務める齋藤正勝氏が基調講演に登壇。「今なぜ、フィンテックでAPIかという理由がある。国の貯蓄から投資へというものすごく大きい施策を出してもなかなか進まない。その中で自分たちにできることはAPIだ」と同氏は力を込める。

さらに、「FXではシステムが安く普及しているため参入障壁が低く、どんどんどんどん業者が増え競争しているが、ネット証券をやってみようという時にはレガシーで重厚なシステムを借りないと証券会社を始められない」と同氏は分析。貯蓄から投資への流れを加速させるためには、参入を増やすしかないと指摘し、業界をあげた取り組みの活性化を促した。

APIの開放が投資家にとって役立つツールの提供を後押しすることにもつながる可能性を示したと言えそうだ。(FinTech online編集部)

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