英国スタートアップの象徴的存在だったPowaの突然の破綻は、世界中のFinTech関係者を騒然とさせた。

革命的アプリで話題をさらったブリティッシュ・ユニコーンも、ふたを開ければ、ずさんな経営と実績をともなわない儲け口で弊害を振りまく、詐欺まがいの企業だったということが発覚。2月24日に破産宣告で幕引きとなった。

「時価総額27億ドル(約3021億5700万円。しかし実際の推定は1億600万ドル/約118億6246万円)」「中国での大型事業」「国際大手企業との契約」などという甘いPRにつられて、米ウェリントン・マネージメントを筆頭に世界中の投資家が総額2億万ドル(約223億6000万円)以上を投資。

その衝撃の矛先はロンドンFinTech業界全体に向けられ、スタートアップの時価総額に対する猜疑心が生まれるなど波紋を投げかけている。

キャメロン首相も絶賛していたが……

2007年の設立以来、「英国スタートアップの最有望株」としてキャメロン英首相にも大絶賛を受けていたPowa。2014年には香港のM Pay Meと子会社ZNAPテクノロジーを買収するなど、順風満帆だと思われていた。

しかし英BBC紙の報道によると、「明確な戦略も持たず、乏しい経営知識と管理能力だけで大口を叩く」Powaのビジネス・スタイルは、モバイルeコマース業界の関係者の目には「失敗する企業の典型例」と映っていたようだ。

商品や広告のバーコードをスマホで読み取るだけで、3秒以内に購入が完了する便利アプリ、「Powa Tag」を開発した--というところまでは良かったが、問題は誠意の欠片も感じられない手法にあった。

PR部門が「ロレアルなどの国際大手を含む1200社に採用される予定」といった根も葉もない大ボラで投資家を惹きつける一方で、1件につき2000ドルのボーナス目当てに強引に契約を取りつける社員が続出。

模範となるはずの創立者、ダン・ワグナー氏自身が、「Googleよりも大きくなる」と大口を叩き、中国ユニオン・ペイとの契約話をでっち上げたことで、弁護士を巻き込む騒動にまで発展した。そのほかクチコミサイトのサクラ戦略に対する報酬は、スターバックスのクーポンで支払われていたという逸話まである。

口先ばかりで実際の実りが見えない状況に、投資家たちはシビレを切らす。

昨年、Powaが予定していた上場を翌年まで延期するとの発表で、ようやく世間は立ち込める暗雲に気がついた。今年に入って自体はさらに悪化し、スタッフや取引先企業への支払いが滞り始めた。新CEOを雇い入れ経営の巻き返しを図るが時既に遅し。2月にはごく一部の社員を除いた一斉解雇と破産宣告。3月には主力商品であったPowa Tagなどのアプリを売却した。

Pawaの破綻は極端な例であったにせよ、スタートアップの多くが“実績”をつくる以前に、「評価額」が先行するご時世になりつつある。

元Powaのエクゼクティブは「ロンドンFinTechの資金調達に大きな影響を及ぼすだろう」とコメント。今後投資家が手綱を引き締めることを懸念している。( FinTech online編集部

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