原油価格下落リスク,シナリオ
(写真=PIXTA)

要旨

原油価格は2月半ば以降、急速に持ち直しを見せた。国際指標の一つであるWTI原油先物価格は2月上旬に26ドル台まで下げたのち反転し、3月下旬には41ドル台と約6割も上昇。直近も38ドル台と高値を維持している。そして、この背景には4つの要因がある。

急速な持ち直しを見せた原油価格・・・4つの複合要因

原油価格は2月半ば以降、急速に持ち直しを見せた。国際指標の一つであるWTI原油先物価格は2月上旬に26ドル台まで下げたのち反転し、3月下旬には41ドル台と約6割も上昇。直近も38ドル台と高値を維持している。そして、この背景には4つの要因がある。

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まず生産面では、「主要産油国に増産凍結の動きが出てきたこと」(要因(1))が挙げられる。

この要因が原油価格の持ち直しに最も寄与したとみられる。具体的には、2月16日にサウジアラビア、ロシア、カタール、ベネズエラの4カ国が1月の水準で生産量を凍結することに条件付きで合意したことだ。

その条件とは、他の主要産油国が追随することであり、4月17日に多数の産油国が参加する協議が行われる予定になっている。これまでの原油価格下落は、世界的な供給(=生産)過剰が背景にあっただけに、供給過剰の緩和に向けた動きとして市場で好感された。

また、「米国に減産の動きが出てきたこと」(要因(2))も原油価格の追い風となった。

EIAの週次統計によれば、直近3月18日の週の米国の原油生産量は日量904万バレルと、ピークから約60万バレル(6.0%)減少している。原油価格下落によって、採算が厳しくなったシェール・オイルが徐々に生産を停止しているためだ。

次に需要面では、「中国経済への過度の不安が後退したこと」(要因(3))が挙げられる。3月上旬に開催された全人代で、インフラ整備によって景気を下支えする方針が表明されたことが影響した。

最後にマネーの面では、2月以降、「米国の利上げペースが鈍化するとの観測が市場で高まったこと」(要因(4))が挙げられる。

米利上げは、商品市場からの資金流出懸念を強めるとともに、ドルの先高感を通じてドル建てである商品価格の押し下げ圧力になる(ドル高になると、ドルを自国通貨としない国々にとっては商品価格の割高感が強まるため)だけに、利上げペースの鈍化は、原油価格にとって追い風となる。

これら4つの要因が複合的に作用することで、過去に積み上げられた売りポジションが急速に解消され、原油価格は急上昇を遂げたと考えられる。

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