マイナス金利が導入されて以降、家計については、特に「預金金利」と「住宅ローン金利」にすでに影響が出始めている。「預金金利」については、普通預金に100万円を預けると1年あたりの利息は10円(税引前)の時代となった。

住宅ローン金利については、「フラット35」で返済期間21年以上35年以下が1.19%、返済期間20年以下は1.02%を記録し、平成28年3月に続き史上最低金利を更新している(※取扱金融機関の提供する金利で最も多い金利:融資率9割以下のケース。住宅金融支援機構HP平成28年4月金利水準より)。

金利低下は預金者にとっては、悲しい現実ともいえるが、住宅ローンを組んでいる人にとっては、金利低下により家計への負担が確実に減り、ケースによっては低金利の全期間固定金利型住宅ローンに借り換えるチャンスともいえる。また、住宅の購入を検討している人のなかには、賃貸で生涯に支払う賃料と生涯に支払う住宅ローン等のコストを比較しながら、この機会をマイホーム購入の好機と考える向きも多いことであろう。

都心の地価は上昇に転じるが

住宅の購入を検討する際にはローンはもちろんのこと、「不動産価格」も重要な要素のひとつである。

国土交通省が発表した平成28年地価公示結果の概要をみると、「平成27年1月以降の1年間の地価について全国平均では、全用途平均で昨年までの下落から上昇に転じた」とある。個人的に着目しているのは、商業地の記述で「金融緩和による法人投資家等の資金調達環境が良好なこと等もあって、不動産投資意欲は旺盛であり、商業地の地価は総じて堅調に推移している」という点だ。

ここ数年の公示価格の推移を見ると、特に東京の千代田区と港区、中央区は地価の上昇が顕著である。しかし、一方で秋田県では地価の下落が続いている。つまり、不動産価格は地域によっても違いがあるのだ。秋田県は人口減少の著しい地域の一つであるが、同様に地価が下落傾向にある地域は他にも存在する。

周知の通り、日本は少子高齢化社会に突入している。今後日本全体の人口減少が加速すれば、地価は下落するに違いない……空き家の問題なども顕在化しつつある中で、そう感じている者も少なくないであろう。

地域間で格差が浮き彫りになる可能性

平成28年2月の総務省統計局による資料によると、我が国の人口は1憶2711万人(平成27年国勢調査による10月1日現在の人口)となっており、平成22年に比べ人口は94万7千人減少している。都道府県別では8都県で人口増加、39道府県で減少である。

個人的には、地価はさらに上昇する地域と下落する地域の格差が高まると予想している。人口減少に伴い、街がコンパクトに集約される可能性があるからだ。

その背景として「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(平成26年8月1日施行)」を指摘できる。この法律の狙いは、国土交通省のWebサイトに見え隠れする。同サイトでは「公共交通を軸とするまちづくり(多極ネットワーク型コンパクトシティ)」構想が示され、コンパクトに街が集約される未来像を示唆している。つまり、この法律の意図するところが具現化すると、地方都市の拡散した市街地で急激な人口減少が見込まれる。一方、大都市では高齢者の急増が見込まれるものの、街がコンパクトに集約される公算が大きいため、マイホームを購入する場所さえ間違わなければ、資産価値は維持、あるいは上昇も見込める可能性があるというわけだ。

「マイナス金利」導入により、市場全体の金利が低下傾向にある中で今後も投資マネーが場所を選びながら不動産市場に向かう可能性は高いのではなかろうか? その意味でも今後の地価の動向から目が離せない。

峰尾茂克 THE FP コンサルティング 代表取締役
1級ファイナンシャルプラン二ング技能士、CFP®、宅地建物取引士。 TV・ラジオ出演の他、新聞・マネー雑誌の取材協力をはじめ、資格の学校 TAC においてFP養成講座講師を務める。企業におけるマネーセミナー、個別相談等で多忙な毎日をおくる。主な著書に『フグ田マスオさん家を買う。』(河出書房新社)、共著に『マイホームで年金をつくる』(評言社)等。

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