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(写真=筆者提供)

世界最大の会員制FinTech団体と自らを定義する「Innovate Finance」の2016年グローバルサミットが4月11日、ロンドンで開催された。主催者発表では42カ国の200人超の会員を含む約1500人が出席、盛大な情報発信及びネットワーキングの催しとなった。

本イベントに参加し、印象づけられたことの報告を通じ、我が国において取り組まれるべき課題とは何か、渥美坂井法律事務所・外国法共同事業、ロンドンオフィスがレポートする。

WorldPay代表者がゲームチェンジの重要性を指摘

象徴的だったことは、多くの登壇者がテクノロジーの可能性を、確信を持って話したことだ。具体的には、テクノロジーが「あらゆること」を劇的に効率的にし、劇的にコストを下げること、またそれにより巨大な市場を創出する--というものだ。

たとえば2015年の最大のロンドン証券取引所上場案件となったWorldPayの代表者は、「UBERはタクシーを保有しない、Airbnbは貸家を保有しない、Skypeは電話を保有しない、Facebookはコンテンツを作らない」と端的に指摘し、過去にないプラットフォームの創造によるゲームチェンジの重要性を強調した。

本イベントが果たした役割の一つには、テクノロジーがもたらす価値を投資家に共有したということがある。ベンチャーキャピタルファンド関係者が討論し、新興企業に対する評価も行った。主催者は、投資家が企業の失敗と挑戦を繰り返し許すことの重要性を指摘した。

国会議員であり英国財務省高官であるハリエット・ボールドウィン氏が登壇、銀行規制政策をよりFinTechに開かれたものに改正する方針を述べた。また規制当局関係者も登壇。金融行為監督機構(FCA)の理事であり戦略競争担当官であるクリストファー・ウーラード氏が新規企業の事業育成を応援する方針を説明した。イベントの締めにはキャメロン首相が録画ビデオで登場、英国をFinTechの世界ハブとして育成することを国家として応援するメッセージを発した。

本イベントは、政府機関、シティ、FinTeck企業、各国の業界団体、投資家、銀行など、考え得る限りのFinTech関係者を呼び寄せ、メッセージを発信させ、交流させるものであった。

スピーチセッションには、登壇関係者の役割ごとに本質的な討議課題が設定されていた。FinTech企業のサービスデモや交流ブースも設けられるなど、関係者を巻き込み、結びつけるという意味において、本イベントは大きな貢献を果たしたといえるだろう。

政府・業界団体ができること、すべきこと

FinTechの発展は、新しい価値を生み出すプラットフォームを創出し、それをビジネス上で実現する力にかかっている。その点で、日本のFinTech関係者が層の厚みをつけ、海外との人的交流やビジネスモデルの発想の交流に参加することは重要だ。

金融庁と経済産業省にできることは、銀行法・資金決済法・割販法の改正などだけではない。

政策・規制当局と業界団体などが互いに他を巻き込みあうべきだ。たとえば民間・大学の高度研究・交流の場の創出、ベンチャーキャピタルとFinTech企業の交流促進・投資分析手法発展の支援。そして企業への実務的な支援提供や税務上の優遇措置、政府機関によるFinTechサービス購入促進--こういったことが検討されることを強く期待する。(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 FinTechチーム)

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