日銀,追加緩和,物価
(写真=PIXTA)

3月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比-0.3%(コンセンサス-0.2%程度)と、2月の同0.0%から、5ヶ月ぶりにマイナスに転じた。3月のコアコア消費者物価指数(除く・食料エネルギー)は同+0.7%(2月同+0.8%)としっかり上昇しており、引き続きエネルギーの下落がコアを大きく下押している。

夏場までは物価は底這う 現状程度のマイナスの水準続く

しかし、総じてみれば、物価は既に底に到達し、短期的な物価サイクルは年後半からは上向いてくると考えられる。これまでの大きな物価下押し圧力となってきた原油価格が底を打ち、持ち直している。内閣府の試算では2015年10-12月期に需要不足がGDP対比1.6%程度(8兆円程度)あると推計している。

1月に決定した3.5兆円程度の2015年度の補正予算による経済対策に加え、0.5兆円程度の2016年度の第一次補正予算による震災復旧、そして5月のG7・サミット後となるとみられる最低でも5兆円程度の第二次補正予算による景気対策が見込まれる。

財政による需要追加もあり、年後半には需要不足は解消の方向に向かっていくと考えられる。3月の鉱工業生産指数は前月比+3.6%(コンセンサス+2.8%程度)と、輸送機械工業で部品供給の問題による工場操業停止があった2月の同-5.2%からリバウンドした。

輸送機械の生産は、2月の同-8.8%に対して、3月は同+8.8%となっている。経済産業省の鉱工業生産の判断は「一進一退」となっており、横ばいである。経済産業省予測指数も、4月に同+2.6%、5月に同-2.3%と横ばいである。震災の影響もあり、生産はしばらく横ばい圏内を抜け出せないだろう。

しかし、マーケットの不安定感も緩和してきており、欧米の景気指標には持ち直しの兆しもあり、輸出・生産サイクルは既に底に到達し、夏場からは上向いてくると考えられる。製造業の在庫調整がグローバルに物価の下押し圧力になる局面は、既に脱しつつあると考えられる。

失業率は下がり、家計消費も持ち直しの兆し

3月の失業率は3.2%と(2月3.3%)と、賃金上昇が始まる水準と考えられる3.5%程度を明確に下回り始めている。3月の有効求人倍率は1.30倍と、2月の1.28倍から更に上昇し、1991年12月以来の水準となり、労働需給はかなりタイトになってきている。2017年前半までのスパンで考えると、3%を下回るまで低下することにより、正社員まで賃金上昇が明確になってくるとみられ、需要を支えるとともに、物価を押し上げる要因になってくるとみられる。

家計に雇用不安はほとんどなく、賃金も若干の上昇が確認され、家計調査でみた消費も横ばい圏内であり、2014年4月の消費税率引き上げ後のサイクルの底に到達し、若干の持ち直しの兆しもみられる。家計調査消費支出(除く住居等)は1-3月に前期比+0.1%となり、10-12月期の同-2.0%から底割れを回避し、持ち直した。

コア消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年同月比は2016年末までには0%に戻り(下落が止まり)、2017年夏場までには消費税率引き上げ分を除いても+0.5%を上回る水準まで持ち直していくと考えられる。もちろん、2017年度前半の2%の物価目標の達成時期の日銀の予想に比べれば、かなり遅れるが、物価サイクルは既に底を打ちつつあると考える。

中期的な物価サイクルも底を打ちつつあると考えられる。リーマンショック後の財政拡大の反動で、財政健全化の方向性で合意した2010年のG20が、需要低迷・デフレ懸念の原因となり、その変化がこの5年間でじわじわと感じられてきた。

追加緩和への焦りはまだ不要

金融政策への過度な依存への反動で、財政拡大を含めた政策を総動員することで合意した2016年のG20は、5年後に振り返ってみれば、需要回復・インフレ復活の起点となり、その変化が今後の5年間でじわじわと感じられるかもしれない。

あまり実感はないかもしれないが、短期・中期ともに、物価サイクルは底を打ちつつあることには注意が必要である。短期的には需給ギャップ、中期的にはグローバルな政策の方向性の変化が原因である。

このような物価と輸出・生産サイクルの動きを考えれば、通常であれば、いまのところ日銀が追加金融緩和を焦る場面ではない。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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