2016年は3年に一度の参議院議員通常選挙の年にあたる。7月25日の任期満了に伴い実施が見込まれている。今回は参議院の議員定数242人の半数が改選対象となる。2010年7月11日執行の第22回参議院議員通常選挙で選出された選挙区73議席と比例区48議席の合計121議席だ。正式公示はまだないが、6月23日公示、7月10日参院選というのが大方の見方だ。
個人投資家が投資をする上で、絶対に知っておきたい選挙用語をご紹介しよう。
①「選挙の株高」
総選挙のアノマリーとしてよく言われる。実際に検証してみると、衆院の解散総選挙の場合は解散後から選挙日にかけて株が上昇する確率は非常に高い。ただ参院選の場合にはアノマリーは確認できてない。
参院選の場合3年おきに半数改選で期日が判っているため、与党は選挙公示前に人気が上がるような政策や景気対策などを出すことが多い。「選挙の株高」は衆院選より前倒しになっているのかもしれない。 話は逸れるが、米国においては「大統領選の前年は株が高い」というアノマリーもある。
②衆参ダブル選挙
参院選と衆院選を同時にする選挙。過去の分析では、投票率が上がり浮動票が増えること、野党間の選挙協力が取りづらいため与党が有利なことが確認されててる。
しかも、衆議院全議席と参院半議席という大改選になるため、勢力図が大きく傾く可能性がある。自民党は現在の高内閣支持率を背景に、衆議院も解散し衆参ダブル選挙に持ち込むのではないかとの見方が強かった。ただし、熊本地震が発生し、国をあげて復興に取り組むためにダブル選挙は行わないとの基本方針が示されている。
③消費税増税延期
2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げをめぐり、世界景気ならびに日本の景気失速懸念から、再延期もしくは凍結の検討をしているとの報道があった。増税実施の場合は個人消費の落ち込みが大きくなる公算が高いためだ。
安倍首相は、「リーマン・ショック級、大震災級の事態にならない限り予定通り引き上げていくという基本的な考え方に変わりはない」とは言明しているものの、消費増税延期を参院選での支持率を上げるための切り札にするとの見方も根強い。最終的には、安倍首相が5月18日に発表される予定の2016年1-3月期国内総生産(GDP)などを見て判断するとみられている。
選挙関連銘柄にも注目
④18歳選挙権
初の「18歳選挙権」が施行される。18~19歳が有権者に占める割合はおよそ2%強と決して高くはないが注目度は高い。 若年層は大半が浮動票との見方もあり、投票行動は予想しづらいからだ。りらいあコミュニケーションズ 、トランスコスモス など世論調査や投票行動調査をする会社が関連銘柄として物色される可能性がある。
SNSを駆使した若い年齢層への選挙活動がより活発化してくるのではないかとの見方が強く、インテージHD やムサシ のようなネットマーケティングを行う企業が選挙関連銘柄として注目される可能性も高い。
⑤インターネット選挙運動
2013年の参院選では「インターネット選挙運動」が解禁となった。これはネット上での選挙活動が可能となったに過ぎず、ネット投票ができるようになったわけではない。今回の選挙も同様だ。2013年以降の選挙では、ネットマーケティングの選挙関連銘柄が物色されている。
⑥投票率
総務省が発行する「国政選挙における投票率の推移」を見ると、昭和の頃は60%~75%程度あった投票率が、平成になり低下、特に平成20年以降60%を割るようになり急低下している。何かしらの対策を打たなければ歯止めが掛からないとの見方も強く、対策としてネット投票解禁も今後は議題には挙がってくるだろう。
一般的には、投票率が低いと浮動票比率が低いため、政党支持率の高い政党が有利と言われている。
内閣支持率が40%を割ると外人が売り始める
⑦内閣支持率・政党支持率
総選挙前に話題になるのは内閣支持率と政党支持率だ。もちろんどちらの支持率も高い方が与党に有利。安倍内閣支持率は、時事通信社調べでは、2013年当初は50~60%の支持率があり、15年の安保強行採決時に一時40%を割ったが、16年4月調査では45%まで盛り返してきている。自民党が現状では圧倒的に有利だ。
外国人は政治の不安定を嫌うため、「内閣支持率が40%を割ると外人が売り始める」というアノマリーがある。
⑧過半数・安定多数
今年の参院選の焦点は自民党がどこまで議席を伸ばすかになりそうだ。参議院の場合は採決が否決された場合、衆議院の結果となるため、衆議院ほどには重要ではないのだが、過半数を越え、安定多数まで行くかが注目される。
今回改選しない121議席のうち、与党の議席数は59(自民党50、公明党9)である。参院の総定数は242。その過半数は122だ。自民党が過半数を得るためには改選する121議席のうち63議席をとればいい。
委員会の招集や採決を決める権限や可否同数の場合の委員長決裁権をもつ委員長を出すのに必要な議席数は129となり、これが安定多数である。70議席なら安定多数になる。
正式公表されたわけではないが、自民党が行った4月の独自の世論調査では参院選で70議席を取るとの結果もあったそうだ。仮に70議席なら、1986年の中曽根首相のもとで行った衆参ダブル選挙での72議席以来となる。
⑨アベノミクスの通信簿
第2次安倍内閣が発足したのは2012年12月。「アベノミクス」を掲げ、デフレからの脱却や経済成長、雇用促進、企業収益の回復などを目指した。ただ、3年経ってもインフレターゲットは達成せず、株価は一度2万円まで上がったものの、今年になって再びアベノミクス前のレベルまで低迷、アベノミクスで買いに回った外人は売りに転じている。アベノミクス3本の矢による成果も見えにくい。安倍内閣の3年間の成績が問われる国政選挙との位置づけになっている。
⑩憲法改正
2015年には安保法案、集団的自衛権の行使などの法改正が行われた。自民党としては憲法第9条の改正をも視野に入れている。
憲法の改正には第96条で規定された「衆議院・参議院それぞれの所属議員の3分の2以上の賛同」が必要だ。この後に国民投票を経た上で国民の過半数の賛同を得る必要がある。衆議院では既に改憲派が3分の2以上を占めており、自民党としては今回の参議院選挙でも改憲派で3分の2以上を集めたい。与党対野党だけでなく、改憲派対非改憲派の票取り合戦も重要だ。(ZUU online編集部)
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