全国で相次ぐ地方私立大の公立化
こうした危機を回避するため、地方の私立大の中には自治体に救済を求める動きが強まってきた。大学を公立化して学費を下げ、学生を集めようというわけだ。4月から京都府福知山市の成美大、山口県山陽小野田市の山口東京理科大が公立化した。このうち、成美大は福知山公立大と名称も変更している。
両校とも毎年、定員割れが続き、大幅な赤字を抱えるなど経営が悪化していたが、公立化で初年度は人気を集め、定員を上回る学生を確保した。福知山市大学政策課は「地元に大学を残すためこうするしかなかった」と苦しい胸の内を打ち明けた。
私立大の公立化は高知県香美市の高知工科大が2009年に実施したのを皮切りに、今回の2校を含め計7校を数える。さらに長野県茅野市の諏訪東京理科大、北海道旭川市の旭川大、新潟県柏崎市の新潟産業大なども地元自治体に救済を申し出ている。
経営危機の私立大を公立化すれば、一時的に学生が集めやすくなるだろうが、大学自体の魅力を抜本的に高めたことにはならず、自治体の財政負担も重い。さらに、大学間の公正な競争を妨げることにもつながりかねず、疑問の声が各方面から上がっている。
地域密着型学部の新設もブームに
地方創生関係の学部、学科を新設し、地域密着で生き残りを図ろうとする大学もある。東京都豊島区の大正大は4月から地域創生学部を新設した。東京都日野市の明星大は2017年度から経営学部に「多摩ブランド創生コース」を設ける。
2018年問題が地方の国公立大にも少なからぬ影響を与えそうなことから、地方の国立大でも地方創生関係学部の新設がブームになっている。地元の学生を確保したいという狙いが込められていることは間違いない。
高知県高知市の高知大が2015年度から地域協働学部を設けたのをはじめ、2016年度からは栃木県宇都宮市の宇都宮大、福井県福井市の福井大、愛媛県松山市の愛媛大、佐賀県佐賀市の佐賀大、宮崎県宮崎市の宮崎大が新学部をスタートさせた。
小出秀文日本私立大学協会常務理事は「大学がどうあるべきなのか、根本から見つめ直す時期に来ている」と指摘する。2018年問題が迫る中、地方を中心に私立大の生き残り競争が激しさを増しそうだ。
高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。