GDP,成長率,賃金
(写真=PIXTA)

1-3月期の実質GDPは前期比+0.4%(年率+1.7%)とコンセンサス(年率+0.3%)を上回った。10-12月期が前期比-0.3%から-0.4%へ下方修正されたことを考慮しても、堅調な結果であった。うるう年効果が年率1.2%程度あったが、それを差し引いても何とかフラットな結果を維持した。

政策決定の遅れが成長率持ち直しを弱める

10-12月期のマイナス成長の後としては、リバウンドはまだ弱く、景気動向は底ばいとなっていたことを示していると言える。1月以降にグローバルに景気・マーケット動向が不安定となり、円高も進行し、企業心理を大きく下押したとみられる。

実質輸出は前期比+0.6%(10-12月期同-0.8%)と横ばいにとどまり、実質設備投資が前期比-1.4%(10-12月期同+1.2%)と拡大に急ブレーキがかかったことが、実質GDPを下押した。

実質消費は前期比+0.5%と若干拡大したが、10-12月期に暖冬の影響で同-0.8%と弱かった反動が期待されていたこと、そしてうるう年の押し上げ効果があったことを考慮すれば、強い結果とは言えない。

一昨年4月の消費税率引き上げ以降の消費者心理の萎縮が、2017年4月の再度の引き上げが迫っていることもあり、続いていると考えられる。

10-12月期に金融政策と財政政策で景気を支えるべきであったが、政策対応が1-3月期に遅れたことも、成長率のリバウンドを遅らせたと考えられる。1-3月期の実質公共投資は前期比+0.3%と、2四半期連続のマイナスから(10-12月期同-3.5%)から持ち直したが、政策の決定が遅れたためまだ弱い。

一時的に衰えた企業活動も持ち直しに期待

一方で、これまでの大幅な原油安による交易条件の改善が、GDPデフレーターを引き続き押し上げ(前期比+0.1%、6四半期連続の上昇)、名目対比で実質成長率をテクニカルに下押してしまっていることにも注意を払う必要がある。

名目GDPは前期比+0.5%と引き続き堅調だ(10-12月期同-0.2%)。アベノミクスは、企業を刺激して、企業活動の回復の力を利用してデフレ完全脱却を目指すものであるので、必要なのはマイナスであった名目GDP成長率をプラスにして、企業が前を向いてリスクテイクができる経済環境を整えることが第一目標である。企業は、実質ではなく名目で活動しているので、企業収益が堅調なのは名目GDPが強く拡大していることが理由だ。

アベノミクスの開始後(2013年10-12月期)から、実質GDPの+2.5%の拡大に対して、名目GDPは+6.4%も拡大している。1-3月期には一時的に企業活動が衰えたが、日銀が予想しているように「先進国が堅調な成長を続けるとともに、その好影響が波及し新興国も減速した状態から脱していく」ことにより、グローバルな景気・マーケットの不透明感が緩和し、いずれドル・円も円安方向に転じていくとみられ、企業活動は再び力強さを取り戻すだろう。

失業率低下で引き続き賃金上昇の見通し

1-3月期には民間在庫の実質GDP前期比寄与度は0.0%であり、10-12月期までの2四半期連続のマイナスと合わせ、在庫調整はしっかり進捗している。比較的堅調であった1-3月期のGDPは、弱まってきた循環的な景気モメンタムが底を打ったことを示すと考えられる。

失業率は3.2%と、賃金上昇が始まる水準である3.5%を明確に下回り、1-3月期の総賃金も前年同期比+2.9%のかなり強い拡大が確認された(10-12月期同+1.9%)、消費活動は回復に向かっていくだろう。アベノミクスの開始後(2013年10-12月期)から、総賃金は+5.7%も拡大しており、賃金が増加していないという指摘は間違っている。

1月の2015年度の補正予算による経済対策(3.5兆円程度)、この5月の震災対策(1兆円程度)そして7月の参議院選挙後に予想される2016年度の補正予算による大規模な景気対策(最低5兆円)の効果もあり、4-6月期のプラス成長を経て、2016年後半の実質GDP成長率は年率2%程度の拡大に服すると考える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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