為替,円高,貿易収支
(写真=PIXTA)

ドル・円のファンダメンタルズは、マーケットの力と実体経済の力に左右されることを説明してきた。マーケットの力は、金融政策の方向性を織り込む日米金利差と、現状の水準ができるだけ維持される慣性で構成される。

国際経常収支と海外直接投資の差がドル・円を左右する

実体経済の力は、国際経常収支と海外直接投資による海外とのマネーの出入り、そして国内のマネーが膨らむ力(円の供給力)であるネットの資金需要で構成される。

日米金利差は国債2年金利の差、慣性はドル・円の12ヶ月ラグを使う。

海外とのマネーの出入りは国際経常収支と海外直接投資の差の12ヶ月移動平均の12ヶ月ラグ、ネットの国内資金需要は企業貯蓄率と財政収支の和(マイナスの方が強い)を使う。

ドル・円=73.1+11.24LN(米国2年金利-日本2年金利)-4.1(日本経常収支-ネット海外直接投資、年率、対GDP比%、12ヶ月移動平均の12ヶ月ラグ)-2.36(ネットの国内資金需要、対GDP比%)+0.36(ドル・円、 12ヶ月ラグ)、R2= 0.87

ドル・円の動きは日銀の大規模な金融緩和で説明されることが多い。実際のところ、2013年ごろからの円安への転換は、海外とのマネーの出入りである国際経常収支と海外直接投資の差が縮小に向かったこと、そして足元の円高は、その差が再び拡大へ向かったことで説明できる。

2010年以降のドル・円をみると、相関係数は-0.93とかなり高い。ということは、過去のデータで、目先のドル・円の動きがほぼ説明できてしまうことになる。国際経常収支と海外直接投資の差が拡大しているということは、円高は不可避なのだろうか?

内需拡大が円高圧力を弱める

国際経常収支と海外直接投資の差が拡大に向かうと、海外からのマネーの入りが多くなり、円高になるとともに、国内貯蓄が増加すると考えられる。ドル・円の説明変数の中では、国内貯蓄の増加はネットの資金需要(企業貯蓄率と財政収支の和、マイナスの方が強い)が縮小することを意味し、国内のマネーを膨らます力(円の供給力)が弱まってしまい、円高圧力を恒常的にすると考えられる。

実際に、2015年以降にはネットの資金需要が縮小・消滅し、海外からのマネーの入りがそのまま円高圧力になってしまったと考えられる。しかし、財政拡大や企業の投資行動により、この増加した国内貯蓄を使う動きが強くなれば、ネットの資金需要は縮小せず、円高圧力を弱くすることができると考えられる。通常、財政拡大は金利上昇を生み円高、財政緊縮は金利低下で円安と解釈される。

一方、現在の日本のように日銀の大規模な金融緩和などにより名目金利が上がらないという環境であれば、財政拡大はインフレ期待を持ち上げ、実質金利を低下させることと、ネットの資金需要が増加し、金融緩和の効果を強くすると考えられるため、円安への動きとなる可能性が高い。

内需が拡大すれば、貿易収支の黒字に対しても減少圧力であり、円高圧力は弱まるはずだ。

国際経常収支と海外直接投資の差が拡大していても、その円高圧力を財政拡大などでオフセットすることは可能であろう。FEDの利上げ再開までの時間、円高圧力を回避するため、財政拡大が急務になってきていると考える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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