失業率,デフレ脱却,物価上昇
(写真=PIXTA)

4月の失業率は3.2%(コンセンサス3.2%程度)と、3月から変化はなかった。新年度入り後、強い人手不足を感じている企業の採用活動は強さを増していると考える。

チャイルドケア拡充や高齢者就業促進の政策の効果もあり、就業意欲を持ち、就業が可能となった人々の労働市場への参入も強さを増していると考える(非労働力人口は前月から23万人減少)。

失業率は低水準維持、有効求人倍率も上昇見通し

労働市場の労働者が増加しても、順調に得ることができ、就業者が増加し(就業者は前月から20万人増加)、失業率は低水準が維持されたと考える。

4月の有効求人倍率は1.34倍と3月の1.30倍から更に上昇し、1991年11月以来の水準になった。既に安定的な職を得た労働者が増加し、求職者の増加が弱い一方で、人手不足による企業の求人の堅調な増加が続き、有効求人倍率は新年度入り後も上昇を続けていくだろう。

失業率は賃金上昇が始まる平均的な水準である3.5%を明確に下回り始めている。賃金上昇が1%程度の物価トレンドに結びつく形は既に完成していると考える。

しかし、政府・日銀が目指す2%の物価上昇が安定的になるためには、失業率が3%を下回り、2.5%を目指す展開になっていかなければならないだろう。

物価上昇率が上がらないと、失業率は下がらない?

日銀政策委員の間でも、「過去の経験則によれば、失業率が3% を切らないと物価が2% になるのは難しい。3%前半の失業率を構造失業率と呼び、これ以上下がらないようなイメージを与えるのは誤解を与える」との指摘があった。

物価の安定を1%程度とみれば自然失業率は3.5%前後、2%程度まで加速を許せば自然失業率は2.5%前後になると考えられる。

1月の2015年度の補正予算による経済対策(3.5兆円程度)、この5月の震災対策(1兆円程度)そして7月の参議院選挙後に予想される2016年度の補正予算による大規模な景気対策(最低5兆円)の効果もあり、2016年後半の実質GDP成長率は年率2%程度の拡大に服すると考える。

追い風が吹く、デフレ完全脱却と物価上昇2%達成

財政政策による需要追加もあり、労働需給の逼迫感は更に強くなる可能性がある。失業率は持続的に低下し、賃金上昇は加速していくとみるが、完全雇用である2.5%前後にまで低下し、賃金インフレにより物価が2%程度まで加速するのはまだ3年程度の時間がかかると考える。

それまで日銀の金融引き締めは想定できず、金融が緩和的な状況、そして実質賃金の上昇による消費活動の活性化が企業のリスクテイクをより強くしていくと考えられる。

強い財政緊縮となる消費税率再引き上げが2019年10月まで先送りされるとみられることは、デフレ完全脱却と2%の物価上昇を目指す動きには追い風だ。

見送りにより、2017年の実質GDP成長率は+0.5%程度である潜在成長率を大幅に上回る+1.6%となり、需給ギャップの需要超過への変化が物価上昇を押し上げていくと考えられる。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト

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