4月の鉱工業生産指数は前月比+0.3%とコンセンサス(-1.5%)を上回った。しかし、経済産業省予測指数が+2.6%であることを考えれば強い結果ではない。4月の熊本震災による工場被災と部品供給・物流の滞りが生産活動を下押したとみられる。
2月にも輸送機械工業の部品供給の問題による工場操業停止があった。テクニカルな動きにより、生産のトレンドが見にくくなっている。経済産業省の判断どおり「一進一退」という状況であると考える。
生産は「一進一退」の横ばい不安
5の生産予測指数は震災の反動が新たに織り込まれ、前月比-2.3%から+2.2%へ上方修正された。6月は同+0.3%と控えめであるが、4-6月期の生産は前期比明確なプラスに、1-3月期の同-0.3%から回復すると考えられる
日本経済は、消費・輸出・生産ともに、底割れは回避し、循環的に底打ちの局面にある。年度初めの4月の出荷は好調で、資本財(除く輸送機械)は前月比+6.0%、耐久消費財は同+4.7%となり、4-6月期の実質GDPは前期比プラスとなる可能性が高まった。
しかし、まだ生産は横ばい圏内の動きとなっており、明確な浮上のきっかけがつかめないでいることも確かだ。今後も、「一進一退」の横ばいにとどまれば成長率のトレンドがゼロ近傍となってしまう。
2016年に潜在成長率(+0.5%程度)を上回る成長率(予想は+0.7%)を維持することはアベノミクス成功のための必要条件であると考えられるが、リスクは残ってしまっている。
G7合意の政策次第ではマーケット失望につながる
G7サミットでは機動的な財政政策の実施を強化することが宣言に明記され、議長国として安倍首相は各国の政策総動員の方針をまとめようとかなり前のめりに奮闘した。大規模な景気対策の実施で、G7で合意された政策の方向性がしっかりしたものであることを、まず日本がその強いコミットメントで示す必要に迫られている。
政府の危機感はかなり大きくなっており、7月の参議院選挙後に実施されるとみられる財政による経済対策は5兆円(GDP対比1%)を上回るかなり大きなものになる可能性が高まっている。裏を返せば、経済対策が小規模なものとなれば、マーケットの大きな失望となろう。
年後半には経済対策の効果と、海外経済の持ち直しによる輸出の回復により、生産の基調は拡大へ改善していくとみられる。強い財政緊縮となる消費税率再引き上げが2019年10月まで先送りされるとみられることは、デフレ完全脱却を目指す動きには追い風だ。
見送りにより、2017年の実質GDP成長率は+0.5%程度である潜在成長率を大幅に上回る+1.6%となり、生産の拡大に寄与するとともに、需給ギャップの需要超過への変化が物価上昇を押し上げていくと考えられる。
会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテジェネラル証券 東京支店 調査部 チーフエコノミスト
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