任天堂 <7974> の君島達己代表取締役社長は2016年5月のインタビューで、映画事業に参入するため複数の制作会社と提携交渉を行っていることを明らかにした。日本だけではなく、世界市場を意識して2、3年で、第1作目をリリースする意向だ。
具体的な内容はまだ明らかにされていないが、「スーパーマリオブラザース」や「ゼルダの伝説」の主人公「リンク」など世界的な人気を誇るゲームキャラクターが登場する3Dアニメ映画が有力視されている。
鉄腕アトムも米国で映像化
過去には日本マンガ界の巨匠、手塚治虫の「鉄腕アトム」も米国で映像化されている。第1作、第2作は日本のプロダクション制作し、ソニーピクチャーズが2003年に第3作目として“ASTRO BOY”のタイトルで、アニメ化した。そんな経緯がある。
また、同作品については、テレビでも放送。日本では2003年4月から2004年3月まで毎週日曜日に放送され、海外でも中国、韓国、米国、英国、ブラジルなど世界17カ国で放映された。国内での最高視聴率は11.2%(関東地区)を記録し、ソニーピクチャーズよりDVD第1巻~第13巻とフィギアを同梱したDVDボックスが発売された。
作品内容は原作とはやや異なりさまざまなエピソードを交えながらロボットと人間の共存から対立、全面衝突と和睦への流れをハードかつシリアスに描く展開だった。いくつかのエピソードはアメリカ人脚本家が執筆し、原爆の是非を問うような遠大なテーマ性はなくアクション・アドベンチャーとして制作された。
2004年の東京国際アニメフェアでテレビ部門の優秀作品賞を受け作品としても一定の評価を得ており、日本の人気コンテンツを映画化、海外展開して成功した例だといえそうだ。
ドラゴンボール、ポケモンを実写化した例も……
ただし、単に、日本の人気キャラクターやマンガを映像化すれば必ず世界的にヒットする訳ではない。アニメシリーズのビデオ・DVDの売上が米国歴代トップの2500万本超を誇る「ドラゴンボール」、シリーズ3作が日本アニメ映画の米国興行収入の第1位から第3位を占める「ポケットモンスター」も実写版で苦戦を強いられたことがある。
ドラゴンボールについては、米国FOXが実写化、制作。同作品は“DRAGONBALL EVOLUTION”として、2009年に配給されたものの、原作との違いを指摘するファンの声も多く、日本、米国などでの興行は成功しなかった。日本の興行収入は4億円、米国は1000万ドル程度にとどまった模様だ。
また人気アニメとして一世を風靡した、ポケモンも例外ではない。2010年に実写化された“Pokemon Apokelypse”はショートフィルムで映画館に配給されなかったが、ネット上では「ピカチュウ」が怖いと話題に。大半のキャラクターは原作のように愛らしい表情を持っているが、なぜか「ピカチュウ」の容姿だけかけ離れている。どことなく色褪せてやつれた感じのピカチュウが体中に傷を負って倒れている様子は、リアルすぎて“かわいらしさ”を感じられないキャラクターになってしまったのだ。
任天堂はこれまで制作会社からキャラクター使用料を得る方式で映画事業を行ってきた。このため失敗しても大きなダメージを被ることはなかったが、今後は方針を転換し映画事業に直接携わりキャラクターの認知度をさらに高めゲーム人口の増加につなげる戦略だ。ゲームとの相乗効果を期待し、映画に加えDVD作品を世界各国で販売することも検討してるだけに「マリオ」や「リンク」のイメージを崩さずに、映像化することが一層重要になるだろう。
マリオ映画の化は和製コンテンツ・ビジネスの光明となるか?
「マリオ」や「リンク」はその点、世界的に有名な日本のキャラクターの1つであり、期待が持てる。映画化の成否には大きな注目が集まっており、今後の「和製コンテンツ」の行方を占うこともできそうだ。
ほかの過去の例では、日本アニメの米国興行収入の第1位は「劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲」(1999年)の85億円。映画館での上映だけでなくテレビ放映、DVD販売、ネット配信などを手掛けるかもしれない。まずはこの興行収入を超えることが目標になり、さらにはグローバルの競争にもさらされることになる。
また「マリオ」などに限らず今後日本のキャラクターやマンガの映像化ビジネスの世界展開が加速すれば、いずれディズニー映画を手掛ける米国ピクサーなど大手企業との本格的な競争を避けて通れなくなる。
一方、日本の国内市場でも海外映画の存在感は大きい。日本国内の映画興行収入歴代ランキングの第1位は、スタジオジブリの「千と千尋の神隠し」(2001年)の304億円だが、ピクサーの「アナと雪の女王」(2014年)が259億円で第3位に入っている。
ピクサー作品としては、「ファインディング・ニモ」(2003年)、「トイストーリー3」(2010年)、「モンスターズ・インク」(2002年)、「モンスターズ・ユニバーシティ」(2013年)、「ベイマックス」(2014年)がトップ100作にランクインしている。2016年4月公開の「ズートピア」も快調にトップを走っている。
世界規模ではさらにピクサーの強さが際立っている。全世界の興行収入をみると「千と千尋」が275百万ドルなのに対し「アナ雪」は1259百万ドルを稼ぎ出しており、4倍以上の差がついている。日本陣営は国内で高い支持を集める作品を送り出すだけでなく、マーケティング戦略も含め世界中で人気を得るための戦略や仕組みを構築することが、「スーパーマリオ」などの映画化でも不可欠になりそうだ。(ZUU online 編集部)
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