夏のボーナス
(写真=PIXTA)

夏のボーナスシーズンが近づいてきた。昨年と比べて、あなたの今年の支給額は増えるだろうか。

一般財団法人労務行政研究所が5月11日に発表した「東証第1部上場企業の2016年夏季賞与・一時金(ボーナス)の妥結水準調査」によると、夏のボーナスの妥結水準は、平均で73万4090円(前年比1.7%増)であった。

夏のボーナスは、単純平均で2014年に70万円台を回復してから、今年まで3年連続の増加となっている。2013年からはじまったアベノミクスの効果が表れているといえるのかもしれないが、最近の円高の進行や株価低迷から、今後も上昇しつづけることは難しい様相になってきた。

このデータは、東証一部上場企業全産業126社を対象とした調査結果で、いわゆる大手企業のボーナスの水準がわかる。大手企業は3年連続での増加となったが、果たして全ての業種でプラスになるのだろうか。

前年比でみると「電力、建設」の伸びが目立つ

業種別の動向を見てみると、製造業は平均76万459円で前年比1.0%の増加、非製造業は平均66万2740円で前年比3.6%と大きく増加している。

全産業の中で前年比が一番伸びたのが電力で10.6%、次いで建設の10.3%となっている。それが非製造業の前年比を押し上げた要因といえよう。他方、ほとんどの業種で前年比がプラスとなっている中、非鉄・金属は△7.0%、鉄鋼が△6.0%とさえなかった。

ちなみに、非鉄・金属とは、鉄以外の金属を指す。金属というとあまり製造というイメージはないかもしれないが、単に鉄鉱石を溶かせば鉄ができるのではなく、様々な他の物質を加えることで特性や硬度を変化させることができ製造に他ならない。ここにも日本の高い技術力があり、かつては日本の産業をささえてきたのである。しかし、近年、韓国や中国の製鉄技術も向上してきており、日本より安価なことから国際競争が厳しくなってきている。

一方、電力が伸びている理由は、これまで東日本大震災で福島第一原発の事故によって生じた損害賠償で赤字となっていたが、当期については黒字に転換しボーナスの支給額を増やしたからだ。元々電力会社の収益構造は、給与や賞与といった各種費用をあらかじめ含んだ形で電力料金を設定しているので、突発的な費用が生じない限り黒字になるようにできている。当期においては震災の影響も落ち着いてきているので当然にように黒字化したということである。

建設については、復興需要の他、東京オリンピック関連、さらにはインフラの老朽化に伴う再開発など建設需要が高まっており、原料高にもかかわらず高収益を確保している。さらに、アベノミクスによる公共投資も期待することができ、人材確保の観点からも強気の姿勢が伺われる。

金額でみると「自動車、ガラス・土石」が多い

金額で見てみると、自動車が108万3230円、次いで、ガラス・土石91万7500円となっている。逆に一番低いのは、商業の58万5915円、二番目は造船の61万5357円となっている。先ほどの前年比と比べるとまた業種が異なるのが興味深い。ボーナス支給額の多寡は、給与水準や業種による慣行などもあるため、一概に比較することは難しいが、やはり金額が大きいところは好調ということは言えよう。

自動車が好調なのは、円安の影響によるところが大きい。トヨタ自動車の2016年3月期の連結純利益は、前期比4%増の2兆2700億円で過去最高を記録している 。特にアメリカでは、ガソリン安による自動車人気の復活や低金利による自動車ローンの影響もあって、SUVを中心に販売が好調である。

ガラス・土石関連は、建設需要の高まりにより窓ガラス等の需要が増えていることと、自動車の販売好調から自動車ガラス、スマホの普及による液晶ディスプレイなど好業績産業に付随する形でこれら業種も好調になっていると考えられる。

一方、商業が低い理由は消費がそれほど伸びていないというこの裏返しと言える。企業の好業績とは裏腹に実質賃金は2012年以降4年連続でマイナスとなっており、消費の増加にはつながっていないのである 。造船については、世界経済の低迷により大型投資は消極的になっており、日本に限らず造船業界全体で厳しい状況になっている。

経団連のデータでも自動車が高い

ちなみに、6月7日に経団連が発表した「2016年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(加重平均)」だと、夏のボーナスは回答があった95社平均で92万7415円(前年比3.74%増)であった。こちらは、東証一部上場、従業員500人以上、主要20業種大手245社が調査対象になっている 。

経団連のデータについても業種別に見てみると、自動車が最も良く106万5091円(前年比3.45%増)となっている。逆に最も少ないのが鉄鋼で66万8709円であった。前年比で見てみると、自動車(前年比3.45)、繊維(前年比3.26%)、紙・パルプ(前年比3.23%)が良く、鉄鋼(前年比△14.78%)、非鉄・金属(前年比△14.36%)、造船(前年比△4.22%)が良くない。

このように、「ボーナスが3年連続増加」と大きく報道されるが、個別に見るとマイナスのところもあり、必ずしも順風満帆といえるような状況ではない。しかしそれでも、ボーナスの増加分は少なくとも消費の増加にはつながるので、今後の消費の拡大に期待したいところである。(ZUU online 編集部)

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