中国人民銀行が6月1日より「中国の決済市場を海外企業にも開放する」新規制を導入した。これによってVisaやマスターカードといった国際大手決済企業が、これまで中国ユニオンペイが独占していた中国市場への参入チケットを手に入れたことになる。

「自由貿易の理念に反する」という世界貿易機関と米政府からの圧力に、中国政府が最終的に応じた結果だ。しかし中国で圧倒的なシェアを誇るユニオンペイを前に、欧米の企業がどこまで健闘できるか−−という点については疑問が残る。

Visa、マスターは「海外旅行用」の中国市場

これまで中国における人民元決済のすべてを取り仕切ってきた中国ユニオンペイ。2002年に中国人民銀行がクレジット事業の促進に向けて、結成した決済企業である。

しかし2012年、米政府による「中国政府は海外の決済企業を締め出している」という訴えを受け、世界貿易機関が介入。時を経て中国政府は独占の手綱をゆるめ始めた。

その一方で爆発的な購買力の伸びを見せている中国決済市場に、何とか入り込む切り口を探していた国際大手。昨年55兆人民元(約88兆3435億円)に達した中国決済市場は、喉から手がでるほど欲しいはずだ。

現時点ではVisaとマスターカードがライセンス取得の申請を検討しており、事業開設条件(登記資本金10億人民元/約160億4882万円以上など)を満たしていることから、ほぼ確実にユニオンペイのライバルとして中国市場に乗りだすと予測されている。

これら新手の欧米決済企業にとって最大の難関は、ユニオンペイの絶大な支配力となるだろう。

中国では銀行経由でVisaやマスター、アメリカン・エキスプレスも発行されているが、これらのカードを取り扱う加盟店が非常に少ない。そのため中国人消費者にとって欧米の国際カードはあくまで「海外旅行用」といった傾向が強く、まずはライセンス取得後に加盟店の開拓から着手しなければならない。

長年ユニオンペイ1本の決済に慣れ切っている事業主や消費者に、「あえてVisaやマスターを使う利点をどこまで納得させられるか」という課題は、想像以上に手ごわそうだ。(ZUU online 編集部)

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