JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEOは7月12日、米国で雇用している従業員、1万8000人の給与を18%引きあげる意向を、米ニューヨーク・タイムズ紙上で明らかにした。
米国では近年、低所得層が増加傾向にあり、貧富の差がますます拡大されている。ダイモンCEOは今後3年間にわたり、現在の基本給、1時間10.15ドル(約1057円)を12ドルから16.50ドル(約1250円から1718円)まで上昇させ、雇用環境を改善することで、従業員の生活にゆとりをもたらすと同時に、より多くの優秀な人材確保を狙っている。
全米で広がる賃金引き上げの動き
同様の動きは、米国全土にわたって広がりを見せている。ここ数年ですでに米国の約半数の企業や機関が、最低賃金の引き上げに成功。ウォルマート、マクドナルド、IKEA、Facebookといった大企業から、カリフォルニア州やニューヨーク州などの各自治体までが、今後数年以内に賃金の引き上げを計画している。
一例をあげると、カリフォルニア州は今後5年以内に最低賃金を15ドル(約1562円)、スターバックスは給与を5%引き上げる意向を発表するなど、米国のあちらこちらで大規模な賃金改革を実施中だ。
世界的に拡大する貧富の差は経済大国米国でも深刻化しつつあり、所得引き上げが労働環境を改善し、人材育成、確保は勿論、消費刺激と経済発展に役立つと期待されている。
JPモルガンは米最低賃金より3ドル(約315円)増しを自社の基本給として設定しているが、さらなる引き上げによって従業員の生活に潤いをもたらすことが、「我が社にとって、長期的には素晴らしい投資となる」とダイモンCEOは確信している。
米Pewリサーチのデータによると、1971年には過半数を超えていた米国の中間層(61%)は年々減少。昨年には50%まで落ちこんだ。
対照的に高所得層と低所得層に増加が見られ、多くのほかの国同様、貧富の格差が拡大傾向にある。Pewリサーチの調査では、中間層を年収4万2000ドルから12万6000ドル(約442万5100円から1308万2496円)の3人家族と設定している。
こうした背景には、熟練技術者への高い需要や、今なお根強く残る学歴主義の支配力がうかがわれる。低技術者、低学歴者は、生活を支えるにも不十分な賃金で労働せざるを得ないという、過酷な環境だ。
その一方で、高所得層の生活はますます潤っており、過去44年間で4%増えた低所得層よりも多い、5%の増加を記録している。