アリババ②

中国の電子商取引大手アリババ・グループホールディングスが6日、米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開を申請しました。申請時の資料によると、上場先はニューヨーク証券取引所またはナスダック市場を検討しているとのことです。今回のIPOの規模は10億ドル(約1,000億円)ですが、この規模は上場手数料を計算するためのもので、IPOの規模を表している数字ではなく、最終的に米フェイスブックの160億ドルを上回り、ハイテク関連企業で最大になるとの観測もあります。中国の電子商取引市場で80%の取引を占めるアリババですが、フェイスブックやツイッター等の過去の大型上場と比べるとどうなのか。中国企業としてのリスクはないのか?大株主であるソフトバンクへの影響はという視点で分析として参ります。


1.フェイスブックorツイッターと比較すると抜群の収益性

まず、アリババと過去の大型IPOとしてあげられるフェイスブック、ツイッターの3社で上場時期、売上、利益、従業員数等を比較してみます。アリババの特徴としては、フェイスブック、ツイッターよりも前に設立され上場までの年数は掛かっているもの、(ただし、2007年~2012年に香港証券取引所に上場していたため、それを考慮すると両社ほぼ同じ。)上場時の売上高、利益ともにフェイスブック、ツイッターよりもかなり多いということです。売上高ベースではフェイスブックの2倍超、ツイッターの32.3倍となります。なお、アマゾンの売上高は74億$、利益は2.7億$となります。また、アリババの売上高利益率も約25%と非常に高くなっています。また、中国の電子商取引市場で80%のシェアを確保しているため、この利益率は維持できると筆者はみています。収益性に関しては非常に優秀であるため、上場後に売上及び利益が順調に伸びるようであれば、フェイスブックのような株価の伸び悩みや、ツイッターのような株価の下落は起きにくいのではないでしょうか?

表 アリババ、フェイスブック、ツイッターの上場時の財務指標

アリババ①


各社IR資料等から作成


2.ガバナンス形態は米国企業と同じ

5月7日の発表されたIPOの申請書によると、アリババのコーポレートガバナンスは28人のパートナーによるパートナーシップ形態によって運営されることが明らかになっています。パートナーは取締役の過半数を指名できる独占権を有します。アリババの創業者である馬雲(ジャック・マ)会長はアリババ株の8.9%所有に過ぎず、ソフトバンクの34.4%、米ヤフーの23%前後よりも少ない出資比率ですが、この形態を取ることで経営権を維持します。また、ソフトバンクと米ヤフーに対してパートナーが指名した取締役候補に賛成票を投じる取り決めをするとのことです。

通常の株式と支配権を強めた株式を発行し、創業者が支配権を強めた株式を保持することで統治を行う形態は、米国のベンチャー企業では一般的です。例えばフェイスブックでは創業者のマーク・ザッカーバーグCEOは通常株主の10倍の議決権を持つ株式を保有しています。グーグルも増資の際に議決権の無い株主を発行し、ラリー・ペイジCEOの経営陣の影響力を希薄化しないようにしています。よって、コーポレートガバナンスの観点からは、アリババは米国ベンチャー企業とあまり変わらないといえます。