「移民を歓迎する国」のイメージが強いドイツ。しかし独企業が移民の雇用に消極的な姿勢を示し始めたことが、フランクフルト総合新聞の調査で分かった。

ドイツには過去1年間だけでも110万人の移民が流入しているが、その間に独大手30社が雇用した移民数はわずか54人。雇用市場が低迷しているというわけではなく、6月だけでも6万5000件の求人が出回っている。

多くの移民が雇用検討の基準となる「最低限の教育を受けていない」背景が、雇用の足かせとなっているようだ。

ガブリエル経済相「利益創出だけではなく、移民の人材育成にも力を入れるべき」

調査によると、雇用された54人のうち、50人は独郵送会社、ドイツポストに採用されている。つまり移民を雇用した大手企業は、最多でもたったの5社ということになる。

こうした過酷な移民雇用環境について、ドイツを代表する製薬会社、バイエル(Bayer AG)は、「教育制度が確立されていない国から、多くの移民が流れてくる。教養は我が社の労働力に欠かせない要素だ」と説明。

社会民主党(SPD)の党首、ジグマール・ガブリエル経済相は、労働に必要な教育や訓練を移民に提供する環境が整っている企業が、ごく少数派である現状を指摘。「大手企業は利益創出だけではなく、移民の受け入れにも積極的であることを証明すべきだ」と、雇用側の協力を呼びかけている。

しかし現実的に見た場合、義務教育、あるいはそれ以下の水準から、大手企業が求める基準に達するまでの教育をほどこすとなると、相当の費用と時間を要する。

昨年難民問題がピークに到達するまでは、受け入れに積極性を示していた大手企業も、「スキルギャップ(技量の差)」という現状を目の当たりにし、尻込みせざるを得なくなったようだ。昨年を境に、移民を雇用する大手企業が激減した。