東京都地方都市で明暗分かれ、2極化が進展した

地方を見渡すと、路線価では都市部と明暗が分かれた。今年の路線価で、昨年を上回ったのは東京都、大阪府など14都道府県。昨年は10都府県だったが、訪日観光客の活況を受けて、地方の中核都市にも路線価の回復傾向が波及。北海道と福岡が8年ぶり、広島と熊本は1992年のバブル期以来の上昇を記録した。

インバウンド以外でも、北陸新幹線の開業効果を受けた地域の路線価が上昇。金沢駅東広場通りは、平均変動率は前年比13.6%、富山県の駅前広場通り(桜町1丁目)が同4.5%とそれぞれ増加した。北陸3県では、平均変動率は0.8%改善して前年比で0.7%のマイナス。マイナスは24年連続となったが、下落幅はバブル崩壊後の93年以降最小となり、下げ止まりの兆候が見られた。

一方、インバウンド需要の恩恵が限られた地域では、路線価の下落傾向に歯止めがかかっていない現状が浮き彫りになった。全国の都道府県で最も下げ幅が大きかったのは秋田県で前年比3.9%のマイナス。同県内で最も高い路線価の秋田駅前通り(秋田市中通り2丁目) は23年連続の下落となった。

さらに、愛媛県が2.1%のマイナスで続いた。この愛媛を含む四国全体では、前年比1.7%減となり、下落幅は0.5%改善したものの、24年連続のマイナスとなり、全国12の国税局別では最も高い下落率となった。

マイナス幅が大きかった県でも、下げ幅に改善が見られた一方、滋賀と三重の2県が前年比でマイナスとなった。滋賀県は、平均変動率が0.2%マイナスと2年ぶりに下落。同県内では、大津、草津地域の最高路線価は上昇したが、そのほかの地域で横ばいとなり県内で2極化傾向が続く。また、三重県も、平均変動率がマイナス1.7%から1.8%に拡大する結果となった。

相続・贈与税にも影響 補正措置にも注意

路線価は全国の主要道路に面した1平方メートル当たりの土地評価額で、公示地価の8割程度を目安として算出したもので、相続税や贈与税の算定基準となる。しかし、あくまで基準であり、土地と道路の位置関係などに応じて路線価は補正され、相続税額も上下する。
例を上げると、自宅の土地が200平方メートルで、面する道路の路線価が30万円/平方メートルの場合、この土地の評価額は6,000万円となる。 さらに自宅が別の路線価が付いた道路にも面している場合、複数の道路にアクセスできる利便性が高く評価され、評価額が補正され上がる。

一方、路線価が算定された道路に対し、高低差がある土地については、評価額が10%下げて算出すると定めている。これは高低差があると、階段などで道路に出入りすることになり、利便性が下がるためだ。この補正措置には、高低差が路線価に勘案されていないことが条件だが、具体的な高低差基準について、管轄する国税庁は明らかにしていない。

2016年の路線価は、東京オリンピック・パラリンピックやインバウンドなどの需要を受けた都市が勝ち組となったが、訪日観光客の都市部での買い物ツアーには陰りが見え始めている。一方、路線価の上昇の波に乗り切れなかった地方都市部でも、今後、外国人観光客が地方都市へリピーターとして足を運ぶトレンドが定着すれば、路線価にも明るい兆しとなるだろう。(ZUU online 編集部)

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