福岡、広島、新千歳でも民営化を検討

民営化された空港には、国出資100%の特殊会社・新関西国際空港が運営していた大阪府、兵庫県の関西、伊丹両空港、国が管理していた仙台空港がある。

関西、伊丹の両空港はオリックス <8591> 、仏空港運営大手バンシ・エアポートのグループが設立した関西エアポートが4月から、仙台空港は東京急行電鉄 <9005> 、豊田通商 <8015> 、前田建設工業 <1824> などが出資する仙台国際空港が7月から運営している。

国交省はさらに空港民営化を各地に広げる方針で、福岡県の福岡空港、広島県の広島空港、北海道の新千歳空港なども検討対象に入れている。

福岡空港は誘導路の複線化工事と国内線の新ターミナルが完成する2018年度末をめどに検討を進めているもよう。運営権売却で得た資金を2本目の滑走路建設に充てる考えも持っている。広島空港は広島県が国に民営化を求めるかどうかの判断材料とするため、収支見通しの調査を進めている。

新千歳空港は北海道内にある国管理の稚内、釧路、函館の3空港と一体で民営化することが検討されている。新千歳を除く3空港は人口減少の影響で単独での経営改善が厳しい見通しで、複数の空港を一括運営することによりスムーズな民営化を想定しているわけだ。ただ、一部地域には慎重論が残っている。

国管理の空港で黒字は全国で5つだけ

地方空港の経営状況は総じて厳しい状況にある。国交省がまとめた2014年度の空港別営業損益では、空港本体事業と空港ビルなど関連事業を合わせて黒字を出したのは、新千歳、羽田、小松、広島、松山の5空港にとどまった。

耐震、老朽化対策や滑走路増設に向けた調査などから、福岡、熊本、宮崎、鹿児島の九州4空港が前年度の黒字から赤字に転落している。埋め合わせには、首都圏をはじめとする国民の税金が投じられているわけだ。

国管理の空港で損益分岐点となる乗降客は、一般に250万人前後といわれている。しかし、航空需要の乏しい地域で短期間に乗降客を増やすのは難しいことから、国交省は民間の柔軟な発想に期待している。

民営化で大きく変わった実例は高速道路のサービスエリアだ。以前は公団の外郭団体が独占して所管し、簡単なレストランとトイレ、土産物店ぐらいしかなかったが、民間企業や地方自治体の参入を認めたことから、さまざまな施設が建設されるようになった。

今では趣向を凝らしたレストランや直売所のほか、ハイウェイホテルや温泉、アミューズメント施設まで設けられ、地域の人気観光スポットとなったところが少なくない。

羽田や関西など大規模空港は現在も多様な物販、飲食店を備え、商業拠点ともいえる存在になっているが、地方空港となると昔ながらのレストランと土産物店しかないところが多く残っている。

空港は年間に10万人、100万人単位の人が集まるターミナルだ。民間の知恵と工夫でどうやって経営を改善し、地域の発展につなげていくのか、真価が問われるのはこれからだ。

高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

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