ブレグジットに「英国買い」を見る投資家達

ソフトバンクのARM買収が契機となりポンド安を背景に英国企業を買い漁る動きが出てくると予想するアナリストもいる。中には、上場IT企業の中ではIQE、Accesso、Telit、Micro Focus、Imagination Technologiesなどが買収対象となる可能性があるようだ。

フランクリン・テンプルトン・ソリューションズで70億ドル(7400億円)規模のファンド運用に携わるスティーブン・リンガード氏もブレグジットの国民投票前から投資チャンスが巡ってくるとの見解を述べていた。またリスクモデル会社のアクシオマは英国を始めとする欧州株価が短期間に25%下落するとの事前予測を発表していた。

不動産市場でも英国買いの動きがみられる。米系金融機関のウェルズファーゴはロンドン拠点の新オフィスビルを購入した。当初は賃貸物件へ移転する予定だったが、ブレグジットによりポンドが対ドルで10%以上安くなったことを踏まえ方針を変更した。このほか中華系の投資家もロンドン市内のホテルを約20%減の価格で購入した模様だ。

ちなみに、ロンドンのオフィスビル空室率は3%程度でパリやニューヨークと比べ低いこともあり相対的に安全な投資先とみられている。ポンド安に後押しされた外国人の不動産投資が加速化するとの見方も広まっているのだ。

英国の金融業界(シティ)ではすでに多くの外国企業がメジャー・プレーヤーとして活動しており外資アレルギーはあまり大きくないとみられるが、ARMのような「Crown Jewel(産業界の至宝)」の1つと目される企業の買収には抵抗感を示す人も少なくない。外国人にはそうした空気に配慮し買収活動を進めることも必要だろう。

ブレグジットの影響は小さいとの見方も存在

ブレグジットは英国経済に打撃を与えポンド安、株安傾向が定着するとの見方が一般的だが、中長期的な懸念材料は殆どないという見解もみられる。

もともと英国は通貨統合(ユーロ)に参加せずポンドを維持してきたため、ブレグジットによる大混乱が起きる可能性は低い。この点は財政破綻によりEU離脱が取りざたされたギリシャとは大きく異なる。

一般的に国際金融・ビジネスは英語や英米法に基づき行われる。通常は英国法かニューヨーク州法を準拠法とし裁判管轄地をロンドンかニューヨークとすることを含む英文の契約書が作成される。これをフランスやドイツを基準とする枠組みに変えることはあり得ないだろう。少なくともEU域外の国との取引には重大な障害になる。

またロンドンには多数の法律事務所、会計事務所、ロイズなどによる大規模な保険市場、ロンドン証券取引所やロンドン金属取引所など世界最大級の金融取引所、バルチック海運取引所を中心とする世界的な海運市場などがある。

こうした環境を踏まえれば英国の基幹産業である金融ビジネスに与える影響は限定的と言えるだろう。

英国は入国審査を経ず自由に加盟国間を移動できるシェンゲン協定にも参加していないため、ヒトやモノの日常的な移動に大きな変化が生じることもない。バナナの形や靴屋が保管できる接着剤の量まで規制するEUの細かなルールに従う必要がなくなれば、自由を求める革新的な企業がヨーロッパ中から集まるかもしれない。

ブレグジットによりEU加盟国との貿易に関税がかかったり労働者の異動の自由が制限され人件費の上昇を招いたりするなどの悪影響が想定されるものの、英国経済の根幹を揺るがすような問題には発展しないと予測する投資家が当面したたかに英国買いを進めていくだろう。(ZUU online 編集部)

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