Senior
(写真=PIXTA)

少子高齢化や非婚化で、1人で人生を歩む人が確実に増えています。「おひとり様」時代の到来です。

2015年国勢調査では、「1人暮らし世帯(単独世帯)」は1,685万世帯となりました。世帯の類型別で32.6%と最も多く、「夫婦と子供から成る世帯(28.1%)」を前回調査に引き続き上回っています。私たちは過去に経験したことがないステージに足を踏み入れたのです。それを前提に不動産ビジネスも行う必要が出てきています。

2035年には1人暮らし世帯が全世帯の37%にも

2015年の国勢調査の結果は、1920年に国勢調査が始まって以来、人口が初めて減少したことが大きな話題となりました。同時に、この時点で世帯数は5,188万世帯で過去最高です。1人暮らし世帯が増えたことが数を押し上げ、1世帯当たりの人数が減っているのです。

なお2010年時点で1人暮らし世帯は既に1,679万世帯あり、「夫婦と子供から成る世帯」(1,444万世帯)を上回っていました。この傾向は2005年以来続いており、10年調査をもとにした2035年推計では1,846万世帯になる見通しです。これはその時の全世帯推計(4,956万世帯)の37.2%にまで上昇することを意味します。

65歳以上がいる世帯は2015年国勢調査で2,152万世帯と世帯全体の40%を超えますが、これを類型別に見ると「単独世帯」は563万世帯、「夫婦のみ世帯」が624万世帯、「夫婦と子供から成る世帯」は311万世帯などとなっています。つまり、1人暮らし世帯(1,685万世帯)の3分の1は65歳以上で構成されていることになります。なお男女別では男性180万人、女性383万人です。65歳以上男性の8人に1人、女性の5人に1人が1人暮らしなのです。

実は欧米では、単身世帯が普通

海外を見てみましょう。2010年のOECD調査によると、単身世帯の割合はノルウェー37.7%、フィンランド37.3%、デンマーク36.8%、そしてアメリカ・ニューヨークのマンハッタン地区では、半数以上が単身世帯です。単身世帯割合で、日本が欧米に追い付くレベルになったということです。なお、欧米では1人で亡くなっても、「孤独死」として問題になることはありません。社会の受け止めに違いがあるのでしょうか。

<元気な高齢者>から<未婚高齢者>に時代は動いていく

1人暮らしの高齢者が増えているのは、元気な65歳以上が増えてきたからといえるでしょう。

全国6,000人の高齢者を20数年調べた秋山弘子・東京大学高齢社会総合研究機構特任教授の「長寿社会の科学と社会の構想」(2010年)によると、男性の約70%は72〜74歳から、女性の約80%は69〜71歳から徐々に体力が落ち、自立度が落ちてきます。しかし男性の約11%は、80代後半になっても60代後半とほとんど変わらない自立度で、通常歩く速度を10年前と比較すると、男女ともに11歳ほど若返っているそうです。

「おひとり様」の増加は、こうした高齢者の自立度が牽引してきたといえます。そして、団塊の世代(1947〜1950年生まれ)以上の世代が依然として1人で元気に生活していくだろうと見られています。2030年代には「80代、90代の1人暮らし」が当たり前になり、その次には「未婚のまま高齢になる人」がメインになる時代が控えているといえるかもしれません。