日銀の金融感は効果は今後増す

9月21日の金融政策決定会合では、資産買い入れプログラムは柔軟化されるだろうが、金融緩和としての量の効果と持続性には、限界が近づいてきているため、次に金融緩和が必要となる局面となれば、マイナス金利の深堀りが主軸になることを日銀は説明すると考えられる。

これまでの政策の総括では、黒田日銀総裁が講演で指摘した、原油価格下落、消費税率引き上げを含む緊縮財政、グローバルな不安定感が、早期に2%の物価上昇が実現しなかった原因として挙げられるだろう。

一方、過去とは違い現在は、原油価格が持ち直してきていることに加え、政府は財政政策を引き締めから緩和に転じ、グローバルな景気・マーケット動向もG20などで合意した、各国の総合的な政策対応などにより徐々に安定し、ネットの資金需要は復活してくると考えられる。

原油価格下落、緊縮財政、グローバルな不安定感という早期に2%の物価上昇が実現しなかった原因について、今後のこれらの方向感は逆になるとみられる。

日銀の金融緩和の効果は今後は増していき、2%の物価上昇の実現性も増していくと判断されるだろう。

日米共に上昇の強さより、底打ちの形に

内閣支持率は上昇しており、日銀への政治的な緩和圧力は弱く、9月下旬に召集される臨時国会で、消費税率引上げ延期法案、経済対策の補正予算案、TPP関連法案の議論を順調に進めるため、マイナス金利政策を含めたアベノミクスの副作用を、野党から批判されるのを政府は好まないだろう。

日銀がマーケットとのコミュニケーションを重視し始めたのであれば、これまでの政策を総括し、それをマーケットが咀嚼する前、そしてマイナス金利政策の副作用の有無が、確認できる日銀短観の貸出態度DIが10月3日に公表される前に、いきなり次の行動に出ることはないはずである。そう判断されれば、9月の金融政策決定会合での総括が、マイナス金利の深彫りなどの追加金融緩和に、直接的につながる可能性は小さいと考える。

一方、2%の物価目標が日銀の金融政策のみで、2年という早期に実現できるものではないことが、様々な原因の分析で総括されることになろう。

デフレ完全脱却を目指し、財政政策、成長戦略と構造改革による、企業活動の活性化で生み出したネットの資金需要を、ポリシーミックスとしての日銀の金融緩和の継続で、間接的にマネタイズしてサポートするというスタンスに、転換すると考えられる。

よって、2%の物価目標は早期に「2年」という期限を設けたものではなく、できるだけ早期の実現を目指しながらも、政府との協働で中長期的に目指すものとされるだろう。

黒田総裁が、量、質、金利の三次元以外のアイデアも議論の俎上から外すべきではないと述べていることを考えると、政府との協働をより強調するため、物価に名目GDP成長率を加えたハイブリッド目標とし、期待インフレ率と期待成長率の上昇によりイールドカーブをスティープ化させる可能性もあると考える。

10月31日・11月1日の金融政策決定会合で日銀は展望レポートを見直すが、追加金融緩和が行われるかは、その時の景気・物価動向次第となる。

日本も米国も経済指標には上昇の強さはないが底打ちの形になってきていること、そして政府の経済対策と7月の日銀のETF買い入れ増額による株価の下支えの効果が出てくることを考えると、追加金融緩和を日銀が必要と判断するような状況にはならないと今のところ考える。

会田卓司(あいだ・たくじ)
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部 チーフエコノミスト

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