8月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は、前年同月比-0.5%(コンセンサス-0.4%程度)と、6ヶ月連続のマイナスとなり、7月から変化はなかった。日銀の2%の物価上昇目標からは程遠い状況にある。
インフレ期待後退は、原油価格のせいだけじゃない
日銀は、インフレ期待を2%程度へ持ち上げるリアンカリングの途上で、原油価格の大きな下落が起き、外的なショックに対する頑健性がまだ低いため、インフレ期待が後退してしまったことを指摘してきた。しかし、コアコア消費者物価指数(除く食料・エネルギー)も上昇幅が急速に縮小している。8月のコアコア消費者物価指数は前年同月比+0.2%(7月同+0.3%)と、昨年9月の同+0.9%から弱含んでいる。
原油価格の下落だけに原因を求めるのは限界があり、9月21日の金融政策決定会合でのこれまでの政策の総括では、原油価格の下落に加えて、2014年の消費税率引き上げ後の個人消費を中心とする需要の弱さ、そして2015年夏以降の新興国経済の減速とそのもとでの国際金融市場の不安定な動きを原因に付け加えられた。
原油価格持ち直しと財政政策緩和への転換
一方、過去とは違い現在は、原油価格が持ち直してきていることに加え、政府は財政政策を引き締めから緩和に転じ、グローバルな景気・マーケット動向もG20などで合意した各国の総合的な政策対応などにより徐々に安定し、原因であったこれらの方向感は逆になるとみられる。更に、失業率が3%程度まで低下し、労働需給はかなりタイトで、人件費の上昇が物価を支える形にもなっている。
2017年初まではコア消費者物価指数の下落は続くが、2017年末には同+0.5%を上回るまで回復すると考えられる。9月の東京都区部のコア消費者物価指数は同-0.5%(コンセンサス-0.4%程度)と8月の-0.4%から若干下落幅が拡大した。一方、9月の東京都区部のコアコア消費者物価指数は同-0.1%と、8月の同+0.1%から低下し、2013年10月以来はじめて下落してしまった。まだ原油価格の下落の影響が残る10-12月期に、前年同月比でみた物価下落圧力はピークを迎えると考える。